2026.07.19NEW

【特集】指導者として“成人式”を迎えた花咲徳栄・高坂拓也監督、“200本の矢”で全国王者奪還を目指す(下)

上から続く / 文・撮影=布施鋼治)

 7月半ば、23日からの和歌山インターハイで必勝を期すため、花咲徳栄高は学内で強化合宿を張った。

 「朝練をやってから授業を受け、放課後にまた練習。それから夕食をとって、さらに練習。ケガで練習できない1名を除き、部員全員が学校に泊り込む形で寝食をともにしました」

▲吉田アラシ(三恵海運)の技術指導を受ける選手

 そう語るのは同高の前田頼夢コーチだ。「今年のチームは、去年のインターハイの決勝で負けたというところから始まっているので、悔しさは胸に秘めている。でも、今年の全国選抜大会や関東大会では、あと一歩のところで勝てなかったと言うか、もうちょっとのところで負けている」

 確かに全国高校選抜大会の学校対抗戦では八戸工大一との準々決勝で3-4と競り負け、関東大会では男子フリースタイル80㎏級で優勝した中納京介以外の優勝者はなし。中納以外は65㎏級の佐藤佑の2位が最高だった。

 「その“もうちょっと”をどう詰めていくかが課題かなと思います」

▲昨年のU17アジア選手権で優勝した中納京介。チームを支える=UWWサイトより

団体戦は「勢い」が重要、勢いで負けたこともある

 高坂拓也監督同様、前田コーチも日大出身。同高を巣立った選手の中には、吉田アラシや石黒隼士のように日大に進学する選手が多いので、ともに先日行われた東日本学生リーグ戦での日大の23年ぶりの優勝が刺激にならないと言ったら、「うそ」になる。

 「練習中、グループラインに祝福のメッセージが届いて知りました。やっぱり母校が勝つのはうれしい」(高坂監督)

▲教え子の石黒隼士(現自衛隊)とともに練習を見つめる高坂拓也監督

 リーグ戦の予選は配信映像で見ていた。「山梨学院大や日体大はチャンピオンクラスがそろっていますからね。誰が見ても、この2校が決勝に進出するという予想だったんじゃないですか。でも、今年の日体大はちょっと元気がないように見えました。百歩譲って日体大には勝てるかもしれないけど、さすがに山梨までは…、と予想していました」

 団体戦はチームの勢いなどが大きく作用し、誰もが予想しえない結果を招くことがある。今回の日大はそれを如実に示した格好だが、高坂監督は「高校の団体戦でも、そういうことはよく起こる」と肌で感じている。

 「高校の方が、もっと分かりやすくあるかもしれません。ウチも確実に勝てるだろうと思っていた試合を落としたことがあるんです」

 国籍を変えてサモア代表としてオリンピック2大会連続出場を目指す赤澤岳が花咲徳栄高に在学中の2008年の話だ。「関東大会の個人戦で赤澤が霞ヶ浦の選手に勝ち、(得点で競う)団体戦で優勝した。それでインターハイの団体戦も大丈夫だろうなと思っていたら、決勝で霞ヶ浦に負けてしまった

▲2008年6月の関東高校大会。霞ヶ浦(茨城)の14連覇を阻止し、創部4年目で初優勝の花咲徳栄。2ヶ月後のインターハイ決勝でリベンジされてしまった(前列左から2番目が岡倫之、右端が赤澤岳)

OBが100人を超え、保護者を合わせた200人が盛り上げる

 その一方でポジティブなデータもある。日大が全日本大学選手権で優勝した2014年、花咲徳栄高もインターハイで2年ぶりの戴冠を果たしている。果たして今回はどうなるのか?

 「周囲の予想として、優勝を狙うのは自由ヶ丘学園、大体大浪商、鳥栖工で、ウチはその下くらいに位置づけられているのかなと思います

 エースは関東高校大会でも活躍した80㎏級の中納京介(前述)、さらにポイントゲッターとして60㎏級の檜山惇也、65㎏級の佐藤佑に期待がかかる。もっとも学校対抗戦は7試合で争われるので4勝した方が勝ち。この3選手で3勝を上げると算盤を弾いたとして、あとひとり誰が白星を上げるのかが問題になってくる。

 「去年は、誰かが負けても別の誰かがそれをカバーできるチームだった。今年も総合力・団結力じゃないけど、お互いをカバーしあえればいいかなと思っています」(前田コーチ)

▲U23全日本王者の向田旭登(東テク)に挑む軽量級選手

 東日本学生リーグ戦で日大が優勝したとき、本サイトではその偉業を「3本の矢」をテーマに記事にした(クリック)。その記事を引用しながら、高坂監督は「ウチは28本の矢ですから」と声を大にして訴えかけた。

 「親御さんを含めたら80本くらいの矢になる。去年、ウチは20周年を迎え、OB会のメンバーも100人を超えました。OB会も含めたら200本の矢になる。そのくらいの団結力を出さないと勝てない

 キーワードは「200本の矢」。小柄な高坂監督の目には、大きな炎が宿っていた。

▲部員28人は全国有数の大所帯。力を合わせて全国一を目指す

《完》