2026.11.03NEW

【2026年世界選手権・特集】アジア大会に続く連続優勝! 安定感を増した清岡もえ(53kg級=育英大)

 【アスタナ(カザフスタン)、布施鋼治】「ずっと悔しい思いをしてきた。(ロサンゼルス・オリンピックの代表争いは)まだ始まったばかりですけど、ここで優勝してオリンピックにつなげたいという思いが強かった」

 2026年世界選手権第6日、女子53kg級は清岡もえ(ALSOK)が優勝した。2024年に非オリンピック階級の55㎏級で世界一に輝いたことがあるが、オリンピック階級では、うれしい初戴冠だった。

▲通算2度目、オリンピック階級では初の世界一に輝いた清岡もえ(ALSOK)=撮影・PINFALL/保高幸子

 昨年の国民スポーツ大会では、53kg級に出場した須﨑優衣(キッツ)を破るなど、清岡は“知る人ぞ知る実力者”として知られているが、その一方で安定度が今ひとつだったことも確か。昨年10月のU23世界選手権2回戦では、筆者の目の前でニシュ(インド)に敗れた。今春開催のアジア選手権の準決勝ではチャン・ジン(中国)に逆転のフォール負けを喫している。

 兄は、2024年パリ・オリンピック男子フリースタイル65kg級金メダリストの清岡幸大郎(カクシングループ)。兄妹で何かと比較されることが多いだけに、安定しない成績も含め、清岡の「ずっと悔しい思いをしてきた」というのは偽らざる心境だろう。

▲今年4月のアジア選手権、チャン・ジン(中国)に逆転フォール負けを喫し、ぼう然とする清岡もえ

メンタルトレーニングの導入で大きく成長

 「このままじゃいけない」

 アジア選手権後、清岡は練習だけではなく、生活の見直しにも取りかかった。栄養士の管理のもと食事メニューを考えるようになった。フィジカルトレーニングにも一層力を入れ、外国人選手を相手にしてもひけをとらない肉体強化に努めた。

 それだけではない。7月からはメンタルトレーナーの指導を受けるようになった。清岡を実の妹のようにかわいがるパリ大会女子57kg級金メダリストの櫻井つぐみさんは「本番になると、もえは緊張して実力を出し切れない」と語っていた。

 ところが、どうだ。兄・幸大郎も取り入れているメンタルトレーニングを導入すると、本番での「どうしよう、どうしよう」という恐怖心がうそのように消え失せた。心身ともに自信を得た清岡は、“マットに上がってみないと出来は分からない”というかつての姿とは別人だった。

▲決勝戦、広いアリーナで堂々と入場する清岡もえ=撮影・PINFALL/保高幸子

 白眉(はくび=最もすぐれていること)は、構えが格段によくなったことだろう。レスリング以外の格闘技にも言えることだが、構えが決まっている選手は総じて強い。ちょっとやそっと攻撃を受けても、構えが崩れないからだ。愛知・名古屋アジア大会でそのことを指摘すると、清岡は「そういってもらえることは本当にうれしい」と相好を崩した。

パリ大会2位を相手に自分のレスリングを貫いた

 アジア大会から世界選手権に舞台を移しても、清岡の構えはすきのないままだった。決勝で、もう一方のブロックから勝ち上がってきたのはルシア・イェペス(エクアドル)。かつて藤波朱理のライバルとして名を馳せたパリ大会の銀メダリスト。昨年の世界選手権も2位に入っている。

 「藤波選手とやっているのは見ていました。すごく勢いがあって、やりにくそうな相手でしたけど、いつかやるときが来ると思っていました。勝因? すごく楽しみな気持ちで試合に挑めたので、勝てたんだと思います」

 試合開始早々、清岡が片足タックルに行くと、イェペスは狙いすましたようにタックル返しへ。清岡はそのまま相手に乗っかるようにして2点を奪う。セコンドからの「離れ際だけ注意しろ」というアドバイス通りに動きながら、その後も着実に点数を重ねていく。

 第1ピリオド2分過ぎには顔面を腫らすアクシデントもあったが、清岡の動きは衰えない。終わってみれば、6-0と無失点で優勝を決めた。

▲2024年パリ・オリンピックと昨年の世界選手権2位のイェペス(エクアドル)に快勝。文句なしの世界一へ=撮影・PINFALL/保高幸子)

 「相手がどういうレスリングをしてくるかは承知のうえだった。それよりいかに自分のレスリングをするか。そこが大事だと思っていました。自分の攻めるレスリングを貫いたことも大きい」

 アジア大会と世界選手権の連続優勝で、清岡は国内の女子53㎏級では抜きん出た存在になった。このままロサンゼルスへ向けての選考レースでも快進撃を続けるのか。もう悔しい思いはしたくない。