2026.11.02NEW

【2026年フォーデイズ杯全日本女子オープン選手権・特集】困難を乗り越え、LA2028を目指す…59kg級・恒村友香子(サントリー)

 今年12月の全日本選手権の出場資格を持っていなかった2021年東京オリンピック金メダリスト、恒村友香子(サントリー)が、2026年フォーデイズ杯全日本女子オープン選手権59kg級で3位に入賞。出場資格を獲得した。

▲優勝は逃したが、全日本選手権の出場資格を獲得した恒村友香子(サントリー)

 恒村は「5月の明治杯(全日本選抜選手権)に出られないと分かってから、つらいことが多かった。5月から、ずっと苦しくて…」と話すと、涙で言葉が途切れ途切れになった。この大会で3位以内を逃して全日本選手権に出場できなかった場合は、引退試合になる可能性もあったそうだ。いくつもの要素が複雑に絡み合った心境から、こぼれ落ちた涙だった。

 恒村にとってきつかったのは、昨年12月の全日本選手権で7位となり、今年5月の全日本選抜選手権に出られなかったことだ。この種の大会の舞台には「出場するのが当たりまえ」だった恒村にとって、これは大きな衝撃だった。

 今年7月の全日本社会人選手権に、12月の全日本選手権の出場資格を求めて出場したものの、心は壊れかけていた。初戦が強豪の南條早映(自衛隊)だったこともあり、黒星を喫して全日本選手権が遠のいた。「レスリングは、もういいか…」という気持ちにもなった。

▲7月の全日本社会人選手権で闘う恒村友香子。敗れて、苦しい状況に追い込まれた

全日本選手権は、「出るだけで満足」ではない

 年間に何度も出場資格獲得のチャンスがある学生と違い、社会人はその機会が少ない。今大会が最後のチャンス。全日本社会人選手権で負傷もしており、そこからはい上がるのに、心身ともに大きなエネルギーが必要だった。

 「これが最後の試合でなくなったことは、ホッとしています」「課題を残したままの引退ではなくなって、よかったという気持ちもあります」との言葉に実感がこもっていた。

▲負ければ引退も覚悟して臨んだフォーデイズ杯全日本女子オープン選手権。課題を克服して全日本選手権へ向かう

 一方、全日本選手権は出るだけで満足ではない。2028年ロサンゼルス・オリンピックへ向けての第一歩。勝たなければならない。そのために克服するべき課題も出てきて、また苦しさに立ち向かうことになるが、昨年からここまでの苦しさに比べれば、わずかであっても先に光が見えている状態。ベースがあるだけに、あと2ヶ月の調整次第で、全日本選手権の優勝戦線に浮上する可能性は十分だ。
 
 昨年3月に第1子を出産。復帰戦として臨んだ昨年のこの大会は、今年と同じ3位に入り、全日本選手権への出場資格を得た。今大会と違って「わくわくした気持ち」しかなく、新しいレスリング人生が始まることの楽しさがいっぱいだった。

 そのあとの全日本選手権は1勝したあと、準々決勝と敗者復活戦で敗れて7位。出産後の試運転の期間として考えるなら、その舞台に戻れて1勝したことだけでも順調と言える成績だったのではないか。しかし、今年5月の全日本選抜選手権の出場資格に手が届かず、そこから苦しさが始まった。その苦しさからはい上がれたことは大きなエネルギーになるだろう。

▲負けた直後、姉・金城梨紗子さんと技術確認をする恒村友香子

出産による体力低下からは回復

 出産による体力の低下からは回復しており、気持ちが盛り上がってきたので、闘志は前を向くはず。ふだんの練習拠点は、東日本学生リーグ戦で優勝した日大。女子選手のみならず男子選手とも練習を重ねており、勢いに乗って全日本選手権を迎えることになる。

 「トレーニングをしっかりしても、体重が増えない」など、年齢相応の変化はあり、若いころとは練習方法も変えなければならない。それでも、今年に入っての気持ちの苦しさに比べれば、解決できる困難。「艱難、汝(かんなん、なんじ)を玉にする」ということわざ通りの成長が期待されるところだ。

 出られるのが当たりまえだった全日本選手権に出ることになり、その重みを十分に感じ、「一戦、一戦を全力で」という気持ちが以前より強くあるという。困難を乗り越えた恒村が、一戦必勝の思いで、2028年ロサンゼルス・オリンピックへ向かう。

▲昨年12月の全日本選手権で闘う恒村友香子。今年の大会では、姿が躍動するか=撮影・矢吹建夫