2026.09.05NEW

ダウン症の人を対象とした「わくわくレスリング教室」八丈島合宿報告(上)

文・写真提供=実行副委員長 森下敏清


 ダウン症の子を対象とした「わくわくレスリング教室」の合宿が、2026年8月29~30日、東京・八丈島で行われました。同教室は、1996年アトランタ・オリンピック銅メダリストで、現在は大東大でコーチを務める太田拓弥氏が2005年に立ち上げました。

 八丈島は東京都の中心部から南方、約290kmに位置し、人口は6,316人(2026年8月1日現在)。ダイビングや釣りなどの自然を生かしたレジャーができ、東京から1時間の飛行で行ける身近なリゾート地として人気があります。

 かつて三原中学校で故山田則孝先生が開いた「山田レスリングクラブ」というチームがありました。第1期生は、のちに茨城・霞ヶ浦高校から千葉・日体大柏高校の監督として、高校レスリング界に不滅の金字塔を築いた故大澤友博先生です。

 大澤氏は日体大を卒業後、霞ヶ浦高校にレスリング部を創設。三原中の卒業生として、私(森下敏清)が最初に霞ヶ浦高校へ進学しました。私と大澤先生は同じ地区なので、小学校・中学校の先輩にあたります。

 その後、沖山功氏(現日本協会審判長)、奥山恵二氏(現東京・自由ヶ丘学園高コーチ=1992年バルセロナ・オリンピック代表)、山下忍氏(香川・高松レスリングクラブ代表)など、多くの好選手が八丈島から誕生しました。

 現在、私(森下敏清)、山下浩、鴨川隆一、大澤陽太、沖山尚春、宮本敏文(茨城県から移住)の霞ヶ浦高校レスリング部OBが住んでいます。他に、レスリング経験者として長崎・大村工業高校出身の久富英仁氏、茨城・土浦日大高出身の松島照彦氏(出身は伊豆大島)らがいます。

▲太田拓弥代表の恩師の故郷へ遠征した「わくわくレスリング教室」

いくつかの問題点を、知恵を合わせて克服

 今回、太田拓弥氏と高校時代の同級生の沖山尚春が中心となり、八丈島での合宿を企画。霞ヶ浦高校OBの5人と久富、松島の計7人で動きました。

 八丈島合宿の問題点は、(1)レスリングの組織がない(クラブややっているところがない)、(2)キャンバス・マットがない、(3)場所がない、(4)資金がない、の4点でした。しかし、知恵を合わせて克服を目指しました。

(1)沖山尚春が設備屋の社長をやっており、人脈を使って八丈町教育委員会、教育委員会生涯学習係、八丈町福祉健康課、八丈町サッカー協会、障がい者支援の「ちょんこめ作業所」などへ足を運び、協力を得ることができました。

▲八丈島教育委員会が後援し、多くの協賛者・企業の協力で実現

(2)太田拓弥先生がマットとキャンバスを探したものの、結果的になく、沖山尚春が自分で買うことを決意。私が「マットは学校の体操マットを借りればできる」と主張。しかし、キャンバスはない。そこで、東京都レスリング協会へ相談し、都立三商高校のキャンバスを借りることになりました。8月22日に沖山尚春が都立三商高校へ行き、本田監督から受け取り、日工大駒場高校の田島先生の車で竹芝桟橋まで輸送し、船に乗せることができました。往復の運搬代は12万円でした。

(3)八丈島の8月は、当然のことながら暑いので、エアコンのある施設でなければなりません。八丈高校の体育館にはエアコンがありますが、日曜日に島内バレーボール大会があるので使用不可。当初、私が勤務する三原小学校のランチルーム(7メートル四方ぐらい)を考えましたが、狭いので不可。健康福祉センターのホールの借用をお願いしましたが、前例がないなどの理由で不可となりました。

 しかし、沖山尚春が町長に直談判し、ダウン症という障がい者のイベントということで借りることを認めてもらえました(健常者のイベントでは難しかったでしょう)。

(4)沖山尚春が大部分を支出していると思われますが、島内の業社から協賛金を得て、半分をまかなっているとのことです。

空港に横断幕を掲げて選手を出迎え

 こうして準備が整いました。8月29日(土)に手配したレンタカーを空港に待機させ、町で用意していただいた横断幕を掲げて選手を出迎えました。これには、太田拓弥も感激の様子でした。

▲横断幕で選手を出迎え。「おじゃりやれ」は、八丈島の方言で、「いっらやしませ」の意味

 手配したホテルの送迎車へ荷物を乗せ、まず島内観光。昼食は、役場の休憩スペースで八丈島漁協女性部の作った弁当。

 午後2時から練習開始。エアコンが効いていたので快適に練習。心配した見学者も約30人が集まり、盛況でした。名簿に記入しなかった人もいたので、もう少し来ていた可能性もあります。島に在住しているダウン症の子供も来て、選手何人かが声をかけ、交流の場面もありました。

 午後6時から居酒屋で夕食兼歓迎会。ほとんどの選手が成人なので、ビールや焼酎を堪能。漁師の松島氏が15kgのカンパチを差し入れ、これには皆さん大喜び。明日葉のてんぷらや海風シイタケなどもあって、大満足でした。

▲地元の漁師から15kgのカンパチが差し入れられた

 翌30日は午前10時から練習。島内にいるレスリング経験者も練習に参加し、選手と積極的にかかわりました。途中、太田拓弥氏が大澤陽太氏へスパーリングをお願いする場面もありました(霞ヶ浦高校の1986年の団体初優勝のメンバー同士。大澤がキャプテンでした)。

 最後は、5点マッチが行われ、OB総出場で頑張りました。

《続く》