2026.08.26

【2026年全日本学生選手権・特集】闘牛王国・宇和島の血が西日本の歴史を変えるか…小川凛太郎(九州共立大)

 2026年全日本学生選手権の男子グレコローマン77kg級で西日本の大学の選手が意地を見せた。2024年の西日本学生選手権王者で、昨年は同3位の小川凛太郎(九州共立大)。東日本5大学の選手をポイント勝ちあり、テクニカルスペリオリティ勝ちありという内容で制した。

 決勝は、昨年2位のデンジャフィールド・ルーシアス・アポロ(神奈川大=今年7月の東日本学生選手権優勝が相手で、前半に決めた4点のリフト技がきき、最後は4-4のスコアで振り切った(相手陣営のチャレンジ失敗で最終スコアは5-4)。

▲東日本学生選手5人を破って優勝の小川凛太郎(九州共立大)

 小川は「とりあえずホッとしていますが、まだ実感が沸きません」と初の全国王者の感想。最後は1点をめぐる攻防となったが、試合前に藤山慎平監督と江藤紀友コーチから受けた熱いアドバイスに、「チームメートが大声で応援してくれ、ホームゲームのようだった」ことが後押しし、しのぎ切ることができたそうだ。

 前日の1回戦と、この日の準決勝で得意の巻き投げが決まったが、決勝では明らかに警戒されていた。そこで、巻き投げをフェイントに隅落とし(すみおとし=相手の重心の隙をついてバランスを崩して倒す)を狙った。それはぎりぎりでしのがれたが、そこからリフト技にもっていけたので、相手の警戒の上をいく作戦が「当たった」と振り返る。

 後半は相手の差しの強さに後手に回る場面もあったが、「ここまできたら、精神力で乗り切るしかない」と気持ちを奮い立たせたという。

▲隅落としで相手のバランスを崩した小川。このあとリフト技へつなげた

 東日本の大学の選手に対する気後れは「ない、と言ったら、うそになりますけど、大会前の南九州大との合同合宿で追い込んだ練習を積んでいたので、自信はありました」ときっぱり。西日本学生の大会に比べると「緊張感が違った」そうだが、「やっていることは変わりない。大きな違いはない」という。

八幡浜工高出身の2人の先輩に続く栄光

 日体大の松本慎吾監督と同じ愛媛・宇和島市出身。闘牛で有名な地だ。八幡浜工業高校時代は、JOCジュニアオリンピックU17と国民体育大会の3位が最高。大学へ進んでレスリングを続けるにあたり、「絶対に全国で優勝する」という強い気持ちがあったそうだ。

 同高から九州共立大へ進んだ選手では、2020年に山﨑翔馬が初めて全日本大学グレコローマン選手権を制し、2023年に長野壮志がこの大会で優勝。いずれも高校時代に全国王者なしのところから学生のチャンピオンに輝いた。前例があるだけに勇気も沸き、「負けられない、という気持ちもありました」と言う。

 4年生にして初めて到達した全国王者に「高校時代の栗本秀樹監督や梅野貴裕監督、今の藤山監督、江藤コーチ(ともに前述)、大関寛穂コーチ、荒木瑞生コーチ」と、指導を受けた監督とコーチの名前を挙げ、「かかわってくれた方、すべての力のおかげで、今日があります」と感謝の言葉を口にした。

▲自分有利の4-4で、相手の猛攻をしのぎ切った

 フリースタイルでの闘いだが、昨年の春季リーグ戦を優勝するなど、チームに勢いがあり、「それに乗ったところもあります。(キャプテンとして)自分の代できちんと成績を残さなければ、という思いもありました」とも言う。

全日本大学グレコローマン選手権は本命で挑む

 藤山監督は「彼の優勝は、だれも予想していなかったのではないでしょうか」と謙そんする。決して目立っていた選手ではなく、4年生になって主将となり、自覚が出てチームをけん引する練習を積んだことが勝因とみている。「夏の合宿でも人一倍練習していましたね」と振り返る。

 「八幡浜工業高校~九州共立大は、黄金コースになりましたね」との声に、「八幡浜工業だけじゃない。どの高校からでも黄金コースになるようにします」と、今後も“無名選手”の発掘~学生王者を再現させることを誓った。

▲相手陣営のチャレンジは実らず勝利が確定。東日本を一矢報いた小川凛太郎

 このあと、国民スポーツ大会を経て、全日本大学グレコローマン選手権(10月23~24日、東京)で、西日本の男子学生選手ではだれも達成していない大学二冠王者へ挑戦する。今回は「西日本の意地を見せた、というより、ダークホースの優勝だったと思います」と話し、本命で臨む次の大会の優勝は難しさが増すと感じている。「今大会に出ていなかった強豪選手もいます」と気を引き締め、再度の優勝を目指す。

 1997年までレスリング部のある高校が皆無だった愛媛県から、最初に国際舞台で台頭したのは松本慎吾監督。2002年アジア大会で日本男子唯一の優勝を成し遂げ、2004年アテネ・オリンピックの代表になって“レスリング後進県”を返上した。同じ宇和島の血が流れている小川凛太郎が、西日本学生レスリングの歴史を変えるか。

▲10月の全日本大学選手権でも豪快なリフト技がさく裂するか