2026.07.30

【2026年インターハイ・特集】高校レスリング界でも“山梨学院大パワー”が躍進…高岡向陵(富山)が初のベスト8へ

 インターハイで4強に入るチームといえば、関東が圧倒的に多く、大体大浪商や京都勢の近畿、鳥栖工ほかの九州、いなべ総合学園ほかの東海、秋田商ほかの東北の高校が並ぶ。逆に、4強が遠い地域もあり、そのひとつが北信越だ。準決勝進出は、1999年に3位に入賞した北佐久農(長野=現佐久平総合技術)までさかのぼる。「北陸」でくくると、さらに23年さかのぼり1976年の北越商(現北越=新潟)が最後だ。

 そんな途上地域から、今年のインターハイ学校対抗戦で高岡向陵(富山)が初のベスト8進出を成し遂げた。準々決勝は、30回出場の伝統校である飛龍(静岡)に1-6で敗れたものの、部史上最高の地点まで到達したことで、かすかな光明が見えたと言えよう。

▲飛龍(静岡)との準々決勝でチーム唯一の勝利をマークした仲村勇希(75kg級)

 指導するのは久保雅紀監督坂本京太コーチで、高校レスリング界では数少ない山梨学院大の出身。51kg級の稲岡一空は、日程が重なったためインターハイには出場しなかったが、U17世界選手権の代表になり、世界進出も視野に入ってきた。不毛地域だった北陸から、いよいよ全国進出がスタートしそうだ。

目標だったが、「もうひとつ勝ちたかった」…久保雅紀監督

 1998年全日本選手権3位の実績を持つ久保監督は、部史上最高の成績に「(ベスト8を)目標にはしていましたが、もうひとつ勝ちたかった」と話し、目標達成の中にも悔しさをにじませた。稲岡一空の不在のほか、正選手の1人が負傷で出場できず、ベストメンバーではなかった。本当ならもっと上に行けたはず、という思いがあるようだ。

 赴任して17年目。富山県の代表にはなれても、全国大会は2回戦や3回戦で負けることが続いた。現在は、推薦制度もあって県外からも選手を受け入れており、部員は24人。半分は高校入学後にレスリングを始めた選手だが、この部員数は大きな強味。

▲北信越から“全国区”を目指す久保雅紀監督(左)と坂本京太コーチ

 一方、部内での競争はあっても、富山県内や近隣県のチームとの競争がないと、全国を見据えた強化は厳しい。石川県や福井県にも全国レベルの選手を擁する高校はあるが、「しょっちゅう出げいこに行けるわけではない」わけで、まず富山県全体のレベルアップが必要と訴える。

「勝つのが当たりまえ」のチームで過ごした坂本京太コーチ

 転機となったのは5年前、教え子の一人で山梨学院大を卒業した坂本京太が赴任してコーチとなったこと。「毎日、選手と激しいスパーリングをやってくれています」と説明。初のベスト8進出の原動力に、坂本コーチの力を挙げた。

 選手の実力アップとチームの躍進には、選手とともに汗を流せる指導者の存在が必要だろう。坂本コーチは、高岡向陵高を卒業して2015年に山梨学院大へ進学。同大学が2013年から2018年まで東日本学生リーグ戦で6連覇した時期とかぶり、在学中の4年間、すべての年でチームの優勝に接してきた選手。4年生(2018年)のリーグ戦のときはレギュラー選手で、全日本選手権への出場経験もある。現在29歳。高校選手とは十分に練習できる体力を持っている。

▲2018年東日本学生リーグ戦で闘う坂本京太コーチ(赤)

 別の高校で2年間、非常勤講師を務め、「母校でレスリングの指導に携わりたかった」という希望がかなっての赴任とコーチ就任。それだけに発展を目指す気持ちは十分で、「若いからこそできることを、最大限にやっています」と話す。この大会でも、体重調整やウォーミングアップで選手と一緒に汗を流した。

 山梨学院大時代は、2021年東京オリンピック代表になった乙黒圭佑(現自衛隊)や2017年世界選手権3位の藤波勇飛と同期。3年上に同オリンピック代表の高橋侑希(現同大学コーチ)、2年下に同オリンピック優勝の乙黒拓斗(現自衛隊)がいて、「勝つのが当たりまえ」というチームの中ですごしてきた。

JOCジュニアオリンピックで3選手が3位入賞

 山梨学院大のレギュラー選手ともなれば、意識だけでなく、技術もハイレベルなものを身につけている。もっとも、初心者が半分というチームにそのまま当てはめるわけにはいかない。「その選手に合った技を教え、指導をする」を心がけ、ときに母校・山梨学院大ほかの大学への出げいこを実施。

 今年は今大会だけでなく、JOCジュニアオリンピックU17で稲岡一空(前述)を優勝させただけではなく、55kg級で松下愛弥が2位、60kg級で本荘挑真が3位に入る成績。その指導が、やっと全国レベルで花開くところまでたどりついた。

▲正選手の負傷で代わって出場、健闘した1年生の柴垣将哉

 もちろん、「ここがゴールではありません」ときっぱり。まず表彰台を目指し、その先は北信越から初の全国一を目指す闘いは続く。山梨学院大が、高校レスリング界の指導でも頂天を目指す-