2026.06.08NEW

【直言! 過去・現在・未来(20)】統合大会の開催を強行か? 「独裁政権」か「民主政権」かが問われる10日の協会理事会

(文=編集長・樋口郁夫)

 前回の本コラムで書いた来年のU15~23統合大会について(クリック)、日本レスリング協会は準備委員会(前回もお伝えしたように、「検討委員会」がいつの間にか「準備委員会」に変わっていたとか)も理事会も通さず、強行する意向であることが分かった。4月下旬の横浜武道館の予約を、キャンセル料がかからないリミットの5月20日にキャンセル。筆者が聞いた限りでは、ジュニアクイーンズカップを開催していた東京武道館の予約もなく、4月10・11日の統合大会開催へ向けて動いているようだ。

 国会で言うなら「強行採決」だ。いや、「強行採決」というのは、とりあえず国会は開催し、もつれにもつれて多数政党が強行突破すること。今回は理事会どころか「検討委員会」での決議も行わず、いつの間にか「準備委員会」となった委員会のトップ(私が聞いた限り、ナンバー2か3と思われる人も知らないうちに横浜武道館をキャンセルしたらしい)と協会幹部の決定で、話が進んでいるようだ。つまり「独裁政治」だ。

 6月10日に行われる協会理事会で、このことが議題として上がるのだろうか。それとも、議題どころか報告も何もなく、来年の大会へ向けて突き進むのだろうか。当初から開催ありきで進んでいたので、後者の可能性が高い。

 だとすれば、現場の意見を軽んじる執行部の横暴は看過できない。一般理事は自分達の存在を軽視というより無視されて事が進むことに抵抗するべきだ。現場の意向を伝えられない「いるだけの理事」「イエスマン理事」なら、今すぐにその職を辞してほしい。

▲日本レスリング協会が来年の統合大会に予定している代々木競技場第1体育館

統合大会開催なら100万円を超える出費増! 代々木でやる意味は?

 筆者は、統合大会に反対しているのではない。地方の指導者にとっては、東京への一回の往復で済むというメリットがあることは確か。そのことは理解している。しかし、運営に携わっている現場の意見を聞いてみると、代々木競技場第1体育館に10面のマットを敷いて2日間で開催するのは無理があるという意見が圧倒的。

 不経済ということも訴えたい。統合大会の一番の目的は、ひっ迫している協会の財政問題だと聞いている。しかし、私の試算では、代々木で統合大会をやった方が多くの出費がかかるのである。前回も書いたが、各会場の1日の使用料は下記の通り(各会場のHPより)。

■横浜武道館=1日9万4,600円、ビジョン使用料=1日5万5,000円(試合順を掲示する)
■東京武道館=1日21万7,800円(ビジョンなし)
■ドーム立川立飛=1日16万5,000円(ビジョンなし)
■代々木競技場第1体育館=1日74万円、ビジョン使用料=1日15万円。

 これまでかかっていた会場費を推定すると下記の通りとなり、3大会で95万4,800円。横浜武道館のビジョンを入れても106万4,800円だ。

 《内訳》横浜武道館(9万4,600円×2)+東京武道館(21万7,800円×2)+ドーム立川立飛(16万5,000円×2)+ビジョン(5万5,000円×2)=106万4,800円

 対して、代々木競技場第1体育館で2日間の大会を開催する場合は、148万円(74万円×2日)かかり、ビジョン代を入れれば178万円。約70万円の増加となる。実際は会場準備で前日も借りることになるわけで、その金額を計算すれば違った数字が出るだろう。100万円以上、もしかしたら、もっと多くの経費増が見込まれる。

 二言目には「金がない」と言って登録費や試合出場料、海外遠征の自己負担金を増やしている協会幹部は、100万円以上の増加見込みをどう説明するのだろうか。増えてでもやるメリットがあるなら、その理由を理事会だけでなく、全国の関係者にきちんと説明するべきだ。

財政上の問題なら、格安使用料の横浜武道館が最適

 調査していて初めて知ったが、前述の通り、横浜武道館が格安の使用料であることが分かった。同会場は、現在のJOC杯での5面マットのほか、1階の武道場にも2面マットは敷けるので(スペース的には4面敷けるが、選手席・応援席の設置を考えると2面)、金~日曜日の3日間の日程で統合大会を開催することは可能。U23を金曜日に、U20を金土曜日にやり、U15・17(中高生)を土日曜日にまとめれば無理ないスケジュールでできる。

 使用料はメーンアリーナ・武道場とも平日は安くなっていて、3日間の会場代を計算すると46万4,200円。ビジョン代を入れても57万4,200円で、代々木競技場第1日体育館の1日分にも満たない。178万円と約58万円-。日本レスリング協会が経費削減を目指して統合大会を思いついたのなら、代々木競技場第1体育館ではなく、横浜武道館での開催を考えるべきだ。

▲横浜武道館1階にある武道場。観客席はあり、マット2面+選手席の設置が可能=同ホームページより

 30年にわたってJOCジュニアオリンピックを開催してきた神奈川県レスリング協会の組織力とノウハウがあれば、運営面での障害をクリアできる可能性は十分。

 単純計算で120万円も多く経費がかかる代々木での開催にこだわるのは、馬鹿げているとしか思えない。協会幹部は、本気になって協会の財政健全化を考えているのか。

「数字をあいまいに扱う組織は、必ず大きなほころびを生む」

 最近読んだ「ダイヤモンド・オンライン」の記事から、経営破綻した日本航空を見事に再生させた“経営の神様”稲森和夫氏のエピソードを下記に紹介したい(クリック)。

 「会社の電気代が4月は少ないことに稲盛氏から厳しい指摘があった。稲盛氏は、なぜ減ったのかと担当者に問い詰めた。担当者が調べてみると、単純に電気代が2カ月に1度の支払い契約になっていたため、支払い月にまとめて計上されているだけだった。つまり、次の月の電気代がその分高かったというわけだ。普通の感覚であれば、無駄遣いをしたわけではないのだな、と納得して終わりにしてしまうかもしれない。

 しかし、稲盛氏は安易な言い訳を一切許さなかった。支払い月であろうとなかろうと、1カ月間にいったいいくらの電気代がかかっているのかを、毎月正確に算出して記録するように厳格な指示を出したのである。電気代という一見すると些細な経費であっても、実態を毎月正確に把握できなければ、正しい経営判断を下すことはできない。いかに事実の正確さが大切であるかを、社員は身をもって深く理解することになった」

 「ダイヤモンド・オンライン」の記事は、「数字をあいまいに扱う組織は、必ずどこかで大きなほころびを生む」と続き、稲盛氏の“経営の神様”ぶりを多く紹介している。それを読んで、日本レスリング協会のやっている「現在かかっている経費」「代々木での統合大会で予想される経費」「横浜武道館での統合大会で予想される経費」を出すこともなく、代々木開催を決めつけて事を進める「あいまいさ」では、いつまでたっても財政健全化は実現できないと思った。

少額の金でも意識と積み重ねが財政健全化につながる

 日本レスリング協会は、多くのことが「あいまい」の上に成り立っている協会だ。例えば、数年前から全日本選手権と全日本選抜選手権を有料にしているが、無料と有料の場合、会場使用料が違う。駒沢体育館の場合、入場料なしの場合は1日15万9,200円、入場料あり(1,001円以上3,000円未満)の場合は1日49万6,200円。その差は約34万円。北ウォーミングアップ場の使用料も入場料の有無で違うので、40万円近い差額ができる。4日間なら150万円か。

 平均入場料1,000円なら、販売会社に3割の手数料を取られて700円が協会へ。4日間で2,200人近く入らなければ、元が取れない。もちろん、「平均入場料」などといったアバウトな数字を出したら、稲森和夫氏なら間違いなく怒鳴りつけるだろう。「1,500円=○人、1,000円=○人、500円=○人」という正確な収支決算を出したうえで、有料大会にするか無料大会にするかを決めるべきである。今の協会でそこまでやっているとは思えないし(やっているのなら、公益財団法人らしく公開してほしい)、その収支決算に神経が行く幹部はいないと断言できる。 

 選手の出場料もそうだ。今年の明治杯の場合、最初に各階級12人を選抜。その後、負傷などで出場辞退の選手が14人いたが、繰り上げはしない規定になっていた。元々12人に満たない階級もあったので除くと、8人分は繰り上げることができた。しかし、規定があるためそれができず、8万円の減収となった。「辞退者がいれば繰り上げる」いう規定にしておき、13・14番目の選手を繰り上げて出場させれば、減収は防げた。「たった8万円」かもしれないが、そうした意識と積み重ねが財政健全化につながるのである。

 稲盛氏は鬼籍に入ったが、匹敵するような“経営の神様”が経営再建のため日本レスリング協会に参入したら、その「ずさんさ」「あいまいさ」に何度もカミナリを落とすことだろう。

 願わくは、10日の協会理事会で統合大会の可否を求める議案が執行部から提出されることだ。協会に厳しいことを書いてきている筆者だが、現場ファーストの協会であってほしい、という願いがあればこそ。そして、「野党理事」が統合大会の収支予算案の提出を要求し、子細に検討して実現の可否を決めるべきと訴えたい。「健全野党」のいない組織は発展しない。

 10日の協会理事会は、富山英明政権が「独裁政権」か「民主政権」かが問われる理事会である。


過去記事

■2026年5月15日:(19)浮上したU15~23の男女統合大会(来年4月10・11日)、目的と経費比較を明らかにするべきだ

■2026年3月4日:(18)理事会の密室化によって協会と現場に大きな溝、改善を求めます

■2026年2月4日:(17)女子のプロアマ合同練習から感じた「輝く舞台はオリンピックだけではない」という事実
■2026年1月6日:(16)何の罪もない選手の練習環境を奪っていいのか? 連帯責任は絶対に科すべきではない

《2025年記事(1)~(15)》