【アスタナ(カザフスタン)、布施鋼治】「3年ぶりの世界選手権。この舞台に戻ってきた喜びと、3年ぶりに世界チャンピオンになることができて、本当にうれしい気持ちでいっぱいです」
2026年世界選手権・第5日(10月28日)。女子50kg級では須﨑優衣(キッツ)が初戦から決勝まで無失点で優勝した。いずれの試合もフォールかテクニカルスペリオリティによる勝利。年に一度の大舞台ながら、ピンチらしいピンチを一度も迎えることがなかった。
絶好調だった要因は?
「専属コーチについてもらって、細かいところまですり合わせながら、とことん突き詰めてレスリングをやっています。そういうところが、すべてはまってきて、今のレスリングができているんだと思います」
専属コーチとは、早大レスリング部の先輩である米澤凌さん。兄・米澤圭さんに続いてインターハイを制覇し、大学レスリングでも活躍した男だ。「私にとって、コーチはもうひとつのブレイン。自分が見えていない角度からのアドバイスや指摘をもらえる。おかげで、レスリングの闘い方や考え方も成長できているし、それを試合でも出せていると思います」
決勝の相手はニーラム(インド)。フォール勝ちを収めたことを須﨑は重要視する。「ワンチャンスを自分のものにする力をつけることができた。しっかりとフォールにつなげられた」
インドといえば、2024年パリ・オリンピックで須﨑に土をつけたビネシュ・フォガトの国。第三者から見れば、「因縁のある国」ととらえることもできるが、今年1月のインドのプロリーグに参戦したことで、愛着のある国に変わっていた。
「そのときから、インドの人たちは仲間に思えています。インドの選手に対してトラウマ的なものはまったくありません。皆さん温かく応援してくれるので、(逆に)闘いやすかった。相手のコーチは、私がインドで所属していたチームのコーチだったんですよ」
初戦から決勝までの5試合の中で印象に残る試合として、須﨑はフェン・ジキ(馮紫琪=中国)との準決勝を挙げた。
「全体的に相手のレスリングを何もさせず、自分のレスリングを6分間やり抜いたからです。攻め続けることができたことは、すごく大きかった。ライバルといえる中国の強い選手にああいう勝ち方ができたことは大きな収穫でした」
もっとも、世界選手権優勝や無失点記録がゴールではない。須﨑は「わたしの(最終的な)目標はロサンゼルス・オリンピックで金メダルを奪還すること」と再三口にした。
「一歩一歩、確実にロサンゼルス・オリンピックで金メダルを取るために、これからも前に進んでいきたい」
だからこそ、2ヶ月後に迫った天皇杯全日本選手権についても言及した。
「天皇杯からオリンピック予選が始まります。天皇杯、来年の明治杯(全日本選抜選手権)、そして世界選手権と確実に優勝して、オリンピック出場を一発で決め、オリンピックでの金メダル奪還に向け準備する時間を作りたい」
2028年ロサンゼルス・オリンピックに向け、須﨑の脳裏に渦巻くキーワードは、「奪還」の二文字しかない。