2026.10.28

【2026年世界選手権・特集】即決した“代打出場”、世界一になっても国内の強豪を警戒…男子グレコローマン60kg級・五味虹登(群馬ヤクルト販売)

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 【アスタナ(カザフスタン)、布施鋼治】表彰式後のミックスゾーン。インタビューを終えた五味虹登(群馬ヤクルト販売)は現地の女性ボランティア・スタッフから写真攻めに遭っていた(下写真)。五味にモテ期到来。そう断言していいほど、若い女性たちが群がっていた。

(撮影=布施鋼治)

 2026年世界選手権・第2日(10月25日)の男子グレコローマン60㎏級決勝。五味は第2ピリオド、1-7の劣勢だったが、一本背負いから一気にフォールを決めた。劇的な逆転勝ち。「いい一本背負いか、と言われたら、そんなこともないと思うけど、試合をしていく中で相手がばてて、バランスを崩してくれたのでフォールすることができました」

 五味はアジア大会代表であり、この大会の代表でもあった鈴木絢大(レスター)の代打出場だった。鈴木がアジア大会で負傷し、世界選手権出場の打診があったのは、当初出場を予定していた国スポ直前だった。しかし、迷いはなかった。

 「打診が来たとき、即決で世界選手権を選びました。自分が世界でどれくらいできるのか。確かめたかった」

▲世界での立ち位置を確認するはずだった世界選手権。松本隆太郎家督(左)、松井謙コーチとともに氏ニングラン=撮影・PINFALL/保高幸子)

1回戦から強豪を連破しての世界一奪取

 ここ数年、五味は60kg級で台頭した感があるが、ここ一番というところで星を落とす印象が強かった。今年6月の明治杯全日本選手権では、準々決勝で稲葉海人(滋賀県スポーツ協会)に敗れている。アジア大会と世界選手権出場を懸けたプレーオフでは鈴木絢大(前述)に辛酸をなめさせられた。

 もっとも、何かをきっかけに大化けする選手はいる。2024年パリ・オリンピックの8ヶ月前、当時は“無印”だった清岡幸大郎(現カクシングループ)が、2021年東京オリンピック金メダリストの乙黒拓斗(自衛隊)や、日体大の練習では圧倒的に分が悪かった山口海輝を破って優勝したことが、その最たるものだろう。

 今回の五味も、似たようなケースに思えてならない。それもそのはず。初戦の2回戦では欧州選手権2位のスレン・アガジャニャン(アルメニア)、3回戦では2024年パリ・オリンピック2位のカオ・リグオ(曹利国=中国)を撃破。続く準決勝では昨年の世界王者アイドス・スルタンガリ(カザフスタン)を破ったうえでの決勝進出だったのだから。

▲1回戦から全開モードで進撃=撮影・PINFALL/保高幸子)

相手の体力低下を肌で感じていた

 もう一方のブロックから勝ち上がってきたのは、今年のアジア選手権3位でランキング大会第3戦(モンゴル)優勝のアリ・アブドラ・バファ(イラン)。第1ピリオド、五味はアリに「あと2点取られたら、テニカルスペリオリティ負け」というところまで追い込まれた。1-1で相手有利の状況から投げを連発され、一気に1-7とリードを奪われ、“リーチ”をかけられたのだ。

 五味は「ちょっと慌てた」ことを否定しない。「ちょっとやってしまったな、という感じでした」。しかし、時間が経つにつれ、相手の体力の低下を肌で感じた。だからこそ、一本背負いがかかるタイミングを待っていた。

 「瞬間、瞬間でいけると思ったところで行って(攻めて)いる。いい試合だったとは言えないけど、しっかり練習している技がかかって、よかったです」

▲スタミナでまさって逆転勝ち。最高の笑みを浮かべ、一番ポーズ!=撮影・PINFALL/保高幸子)

 世界選手権初出場で初優勝したにもかかわらず、五味は決してぬか喜びしていなかった。「今回チャンピオンになれたけど、日本では、まだ(強豪がそろった全日本クラスの)大会で優勝したことない。12月の全日本選手権は、チャレンジャーの気持ちで挑みます」

 世界一になってもおごらず-。プレーオフで鈴木に敗れたあとも、五味は自分がやってきたことを信じ、練習メニューをいじることはほとんどなかった。

 「自分の得意なところ、プラス、そこから何ができるかということを考え、スパーリングをする中でも場外際で点数を取られないことを意識してやっていました」

 鈴木や稲葉にリベンジするチャンス到来。文田健一郎(ミキハウス)の動向は? 世界選手権で化けた男は、12月の全日本選手権でどんな結果を残すのか。