(写真提供=栄和人・モンゴル総監督)
栄和人総監督が指揮するモンゴルの男女チームが、復活へ向けて燃えている。同総監督は8月17日にモンゴルに渡り、9月24日まで約40日間滞在して選手を鍛えている。
現在は、アジア大会へ向けて最後の追い込み練習の真っ最中。名伯楽の指導を求めて多くの選手が参加を希望したそうだ。一人で指導できる選手数には限りがあるので、「かなり絞らせてもらった」そうだが、それでも男女合わせて180人が集まる練習が連日続いた。
日本からも、前回のアジア大会優勝で昨年の世界選手権女子50kg級代表の吉元玲美那(KeePeer技研)が参加。兵庫・芦屋学園高の坂本涼子監督が棚田紗雪(大体大1年=芦屋学園卒)、河瀬咲衣子、由井詠葉(芦屋学園高3年)、杉林羅夢(芦屋学園中3年)を連れて参加。協会をあげての熱気ある練習に接した。
2010年代は女子の世界チャンピオンも生み、男子でも世界トップ選手がいたモンゴルだが、今は低迷。協会内部のごたごたもあって、選手がきちんと練習できる環境になく、昨年夏に就任した栄総監督が感じたことは「練習量の不足による体力のなさ」。
試合では、第1ピリオドで大量リードしながら、第2ピリオドで追いつかれて逆転されるケースもあり、いい技術を持っていても生かせていないのが現実だった。日本の大相撲でモンゴル力士が活躍していることで分かるように、格闘技に適した肉体や精神力を持った選手は多いが、6分間を闘い抜くスタミナがないのが難点。
栄総監督は、最新の技術を教える一方、「2時間の練習終わってから補強を10種目! 最後には必ず腕立て伏せを100回やらせている」と“根性練習”も実施。かつて中京女大(現至学館大)で、吉田沙保里らオリンピック金メダリストのべ14人を育て(メダリストはのべ17人)、世界最強のチームに育てたときと同じやり方でモンゴル選手を鍛えているという。
「昭和の練習」と笑うが、どの競技でも初期の頃は徹底した練習量が必要。“過去の遺物”として葬ってはならない。その段階をすぎている選手には、ハイレベルの技術習得が中心。その選手に合わせた練習方法を取り入れていることを強調した。
そうした練習が受け入れられていることは間違いない。2回目のモンゴル合宿参加になる坂本涼子監督は「栄和人総監督をはじめ、モンゴルレスリング協会のスタッフ、そして選手たちが一体となって練習を盛り上げており、とても活気のある中で、質の高い練習ができています」と振り返る。3月に参加したモンゴル合宿のときに比べると、「選手の練習に対する意識が格段に変わっていたことは印象深いです」と言う。
前回より、積極的に練習に参加する姿勢があり、「最後まで集中して取り組む姿勢が強く感じられました。栄総監督による意識改革が、選手たちの中に着実に浸透しているのだと感じています」と話した。
練習のみでは初めての海外遠征になる吉元玲美那は「モンゴルは高地だからかでしょうか、息が上がります。久々に栄監督の基本の大事な体力トレーニングに向き合い、毎日練習しています」と言う。ウランバートルの標高は約1,300メートルで、かつて日本チームの夏の合宿地だった長野・菅平と同じ。平地より息苦しくなるのは当然で、「過呼吸になりそうになりながら、毎日練習しています」と言う。
アジア大会のチャンピオンが耐えているのだから、地元の選手も見習う。歯をくいしばってついていき、スパーリングでは、顔や手に傷がたくさんできるほど必死に向かってくるそうだ。「特に上半身の筋肉痛が強く、試合のような緊張感で練習ができています。来て、本当によかったと思います」と言う。
62kg級までのアジア大会と世界選手権代表の選手のほか、男子の57kg級の選手とも練習。12月の全日本選手権へ向けて、大会出場では得られない効果的な練習を積んでいる。
今回のアジア大会では、前回大会の男子フリースタイル65kg級で優勝したツルガ・ツムルオチルが74kg級に出場して連覇を目指すほか、今年4月のアジア選手権・女子76kg級で優勝したダバーナサン・エンケアマリンらに優勝の期待がかかる。しかし栄総監督は高望みせず、「多くのメダルを取ることが今大会の目標」と言う。
北朝鮮、中国、インドが強くなっている中で、指導して1年で結果を求めるのは無理があり、付け焼き刃の練習になりかねない。2年後のロサンゼルス・オリンピックを目指した長期的な練習をしており、そのために全体のレベルアップが必要。「2年後の結果を見てほしい。腹をくくってやる」と力を込めた。
意識改革ができ、日本にも来てもらってそのハードな練習に触れたモンゴル・チーム。体力のある若手が台頭している階級もあり、新しい選手の躍進は頼もしい限り。愛知・名古屋アジア大会で、どんな結果を出すだろうか。