(文=布施鋼治)
世界王者(田中忠道=1966年)も輩出している法大から実に47年ぶりに学生王者が誕生した。2026年全日本学生選手権第2日(8月21日)、男子グレコローマン87kg級を制した矢作元貴(4年=東京・日本工大駒場高卒)だ。
「大学レスリング界での僕のビジュアルはベスト32くらいのレベルだと思うので、レスリングくらいは優勝しておこう、と。その気持ちが強かったから優勝できたんだと思います。法大の歴史に名を刻むことができたし、大学のOBやOGは本当に喜んでくれました」
決勝では田原想羅(育英大)を5-1で撃破しての初優勝。「僕には技とか(そんなに)なく、ずっとゴリゴリ押し続けるタイプ。続けていた体力トレーニングが効いたのかなと思います」
もうひとつ、現実を見つめたシビアな戴冠理由をつけ加えることも忘れなかった。「(同時期に)U20の世界選手権があったので(強豪がこの大会に不出場)、そのおかげが結構あると思います。その点、運もあったと思います」
矢作はレスリング出身のMMAファイター、山本“KID”徳郁が設立した東京・KRAZY BEEのキッズレスリング部門出身。「ちっちゃい頃はKIDさんや、たまに恭司さん(堀口=RIZIN2階級王者)に教えてもらっていました。当時の僕は本当クソガキだったので、周囲には迷惑をかけた記憶しかない。それくらいレスリング場で暴れ回っていました(苦笑)」
大きな転機といえば、小学校3年生のとき、現在の法大レスリング部の阿佐雄二監督(1978・81年全日本選手権グレコローマン57kg級優勝)が指導者として入ってきたことだろう。
「法大を選んだのも、阿佐監督がいるからいっかという感じでした」
矢作はグレコローマンで優勝した余韻に浸ることなく、翌日からスタートしたフリースタイル86kg級にもエントリー。準決勝まで勝ち進む健闘を見せた。
なぜ“二刀流”に挑戦したのか?
「フリースタイルは苦手というか、そんなにできないんですけど、最後のインカレだったし、親も見に来ていたので、楽しませようかと思いました。緊張することなく闘うことができたので良かった」
フリースタイルの3回戦では、豪快に反り投げを決めようとしたところ、身体を浴びせられ逆にニアフォールにもっていかれる大ピンチに陥った。その瞬間、阿佐監督は首をかたむけながら、笑いをこらえるのに必死だった。
なぜ失敗してしまったのか?
「結構実力差があると思ったので、リフトにいってやろうと思い、実際にやったけど、相手に足を持たれてしまった。思わず(いつも闘っているグレコローマンのクセで)『足!』と叫ぼうとしたけど、冷静に考えたら闘っている舞台はフリースタイルだったので何も言えなかった」
どこかとぼけた雰囲気のある矢作だが、大学卒業後もレスリングを続けるかどうかはいまのところ「未定」と話す。
「親とは就活の話はするけど、レスリングについて話すことはないですね。この優勝をつなげていこうかなという思いもあるけど、実際に声がかかったらどうしようか、という感じです」
明日はどっちだ!?