(文=布施鋼治)
大会3連覇を達成したというのに、女子50kg級の森川晴凪(至学館大)に笑顔はなかった。2026年全日本学生選手権第2日。小川凜佳(育英大)を破って優勝した直後は息が激しく、すぐ話せる状況ではなかった。気持ちを整えてから、森川はその理由を話し始めた。
「前回(今年5月)の明治杯で悔しい思いをしたので。インカレがゴールじゃないということは分かっていた。でも、とりあえずホッとしました」
森川は今年5月の明治杯全日本選抜選手権・準決勝で、今大会の決勝を争った小川に1-3で敗れている。リベンジを果たしたという意味で安堵する思いもあったが、この階級の頂点には須﨑優衣(キッツ)が控えている。ここで満足するわけにはいかなかった。
「小川選手とは、(2022年の)インターハイ決勝でも当たるなど結構闘っている。この間の明治杯で初めて負けたんですよ」
短期間でリベンジを達成できたのは、すぐ課題点を修正することができたからだろう。
これまでは、「自分は結構守りのタイプで、自分からは(なかなか)攻められない。練習では攻め切れても、試合になったら硬直してしまって、そうすることができなかったりする」だった。しかし、今大会は「最初から落ち着いてレスリングができました。いつもスパーリングでかかっている技を試してみようと思ったことが最終的にはよかったんだと思います」と言う。
第三者の目から見ても、小川は地力をつけていることが分かる攻防だった。それでも、試合終了間際に宿敵からニアフォールを奪う形で8-3と突き放すことができたのは、最後の処理の部分で森川が上をいっていたからだろうか。
来春には至学館大を卒業するが、社会人になってからも母校を練習の拠点に現役を続行する意思を固めている。目標はロサンゼルス・オリンピックながら、そのためにはライバルとなりつつある小川を突き放したうえで、須﨑に勝たなければならない。
「先日の全日本合宿で須﨑さんとやる機会があったけど、全然かなわないというか、まだ届かない実力差があった。でも超えないといけない。まだ時間は少しあるので勝てるようにしたい」
オリンピック直前に、何かをきっかけに今までずっと超えられなかった格上の選手を打ち破った例は過去にいくつもある。課題となる攻撃力を磨いたうえで、森川は“打倒・須﨑”を目指す。