2026年インターハイの個人対抗戦・女子76kg級の藤田眞妃琉(群馬・前橋育英)が3連覇を達成した。決勝は今年4月のジュニアクイーンズカップで敗れていた高山美優(愛知・至学館)との再戦。2度のタックルで先制され、0-4と苦しい展開となったが、同点に追いつき、最後はパワー十分のエビ固めでフォール勝ち。女子史上5人目の快挙を達成した(クリック)。
マット上では全身で喜びを表した藤田だが、マットを降りて報道陣に囲まれると、涙がこみ上げてきた。「先生(柳川美麿・育英大部長)には『気持ちだ。最初から行け』と言われていましたが、プレッシャーもあって…。最初、4点を取られたときは、怖い、という気持ちに襲われてしまいました」と話し、厳しい闘いから解放された熱い涙が目頭を濡らした。
昨年12月には全日本選手権に、今年5月には全日本選抜選手権のマットに上がり、シニア最高の舞台も経験している。だが、挑む大会と守る大会とは大きな違いがある。まして4月に負けた相手との再戦。プレッシャーも大きかったようだ。
高山とは、今年4月だけでなく、中学のときから何度も闘っていて、その強さを知っている。ウォーミングアップ場で顔を合わせたときから、すごい気迫が伝わってきたそうで、「最初から仕掛けてくる怖さもあったし、カウンター技も怖かった」と言う。
それだけに、4点をリードされたときは「焦りがあった」と言う。その恐怖や焦りを克服できたのは、この大会にかける思いだった。全日本選手権にも出たし、U20アジア選手権に出場して国際舞台での台頭も視野に入れ始めたが、現在の一番の目標は「高校で最高の舞台のインターハイで、しっかり勝つこと」だった。
その思いが、劣勢をはね返した。練習の成果もある。逆転フォールにつなげたエビ固めは、自らがタックルに行き、相手のタックル返し狙いを防いで仕掛けた技。「あれだけ強い選手を相手にきれいなタックルに入って、きれいなポイントを取って勝つことはできないと分かっていた。もつれても(自分が)取る練習をやってきた」そうで、想定していた展開となり、それに対応した勝ち方だったようだ。
チャンスの体勢になって、一気にフォールにもっていくのは、父であり元全日本王者、現プロレスラーの藤田和之さん(日大卒)の「レスリングはフォールするスポーツ」という教えから来ている。まずポイントで追いついて、という闘いも間違いではないが、レスリングを始めたときから教えられた「フォール狙い」は、練習のときから取り組んでいること。
0-4のときでも、「まず同点へ」ではなく、「チャンスがあればフォールへ」という気持ちがあったそうで、その“習性”が勝利を呼び寄せた形だ。
ハーフタイムのとき、応援席にいた父やチームメートの顔が見え、「ここまで応援に来てもらって、負けるのは申し訳ない、という気持ちになりました」と言う。それが、「格闘技は、やるか、やられるか。迷っていたら負け」という勇気になり、気持ちが切り替わったそうだ。熱い応援が優勝を後押ししてくれた。
3連覇の偉業については、「前の4人に比べると、自分はまだまだです」と謙そん。「この3連覇が、自分のレスリング・キャリアで最高のものにならないようにしたい」と話し、ゴールではないことを強調した。この階級のオリンピック・チャンピオンの鏡優翔(サントリー)とは、全日本合宿で練習したことがあるが、「手も足も出ないです」と、実力の違いを痛感している。
今回の快挙は通過点であることは言うまでもない。当面の目標は「国内の一番手」と言い切り、12月の全日本選手権へ向かう。