昨年の優勝メンバーから2人(坂本広=現日体大、リボウィッツ和青=現日大)が抜けた東京・自由ヶ丘学園。今年3月の全国高校選抜大会は、51kg級不在のハンディもあって決勝で屈したが、新入生が入って全メンバーがそろい、2026年インターハイで力強くよみがえった。
大会史上初の「東京-大阪」の対決となった大体大浪商との決勝。大体大浪商は近畿勢として初の優勝を目指すとともに、2年前の2位(決勝の相手は佐賀・鳥栖工)を越える成績を目指し燃えていた。
近畿初の快挙を目指す意地の前に、昨年のように第4試合で4勝目をマークし、早々と優勝を決めたようにはいかず、第1試合を落としてしまい、追う展開となった。それでも、昨年のメンバーが残っている布陣は強力。55kg級から前田悠樹、薬野柑太、齊藤巧将が実力を発揮して3連勝。
71kg級を落としたあと、80kg級のが第1ピリオドでテクニカルスペリオリティ勝ちし、チームと応援団が歓喜に包まれた。
昨年と同じく宙に舞った田野倉翔太監督。現役時代は55kg級だった監督の体は、昨年はパワー十分の選手の手によって高々と上がり、その顔には恐怖の表情も浮かんでいたが、今年も高く上がりながら恐怖の表情はなく、応援団席へ向かって余裕をもってVサイン。経験が監督の行動に余裕をもたらした。同じように、経験が選手の実力をアップさせ、優勝を引き込んだのだろう。
同監督は、「最高です!」という言葉を2度繰り返し、連続優勝の喜びを表した。勝因は、去年の優勝メンバーが5人残っており、「その選手が、決勝戦であっても、落ち着いて闘ったこと」を挙げた。やはり、経験が選手を強くした。
最大のヤマ場は、60kg級で実現した昨年の個人対抗戦60kg級で1年生王者に輝いた薬野柑太と、同55kg級を制した古澤大和との対戦。薬野は0-1とリードされたが、第2ピリオドの1分すぎ、古澤のタックルをレッグホールドで返して2-1と逆転。アクティビティタイムの1点も加わって3-1。
セコンドからのチャレンジ要求を取り下げさせた古澤の怒濤の攻撃が始まったが、それをしのぎ切り、勝利を引き寄せた。この春から60kg級へ上げた古澤に対し、高校入学時から60kg級で闘っていた薬野のフィジカルが上回ったとも考えられるが、薬野の学校対抗戦への強い気持ちもあったことだろう。
薬野は東京都予選の個人対抗戦でチームメートに敗れ、今大会の個人戦には出場できない。その分、学校対抗戦へ燃える気持ちが強かったのは想像できる。田野倉監督も「爆発させてやろう、という思いはあったと思います」と説明した。
その気持ちは、薬野だけでなく、全国高校選抜大会の優勝を逃したことで「全選手が持っていたと思います」と言う。
「どう立て直しました?」という問いに、「立て直す、じゃないです」と即答。「立て直す」という言葉には、自分たちこそが本来は王者なんだ、というニュアンスが含まれている。そうではない。2位という現実を受け止めさせ、「2位が実力なんだよ、チャレンジャーとして闘わなければならないよ」という気持ちを伝えてきたそうだ。
勝負の世界は「最新の結果が実力」という言葉も口にした。昨年の優勝メンバーが5人残っているチームとはいえ、それは昨年の結果。今年は2位のチーム。確実に優勝できるという気持ちにはなれないし、この大会では、その2位すら保証されていないのが勝負の世界。「明日、闘ったら、勝敗が逆になっているかもしれません。どのチームとの闘いも、緊張感いっぱいの試合でした」と話し、きつかった闘いを振り返った。
高校レスリング界には、名匠・大澤友博監督が率いた茨城・霞ヶ浦の11連覇(1990~2000年)が不滅の金字塔として存在する。この偉業ははるか彼方だが、その次は4連覇(光星学院、霞ヶ浦2回、日体大柏)。これは背中が見え始めたのではないか。
「いえいえ、今は戦国時代。どこも強いです。勝って兜(かぶと)の緒を絞めないとなりません」と田野倉監督。「連覇で選手はいっそう自信をつけるのでは?」との問いにも、「過去は過去。これから新たに勝っていくことを目指すだけです」と、自信が過信にならないよう十分に注意し、今後の闘いへ挑む腹積もりだ。
初日は、高校レスリング界のユニフォーム改革に呼応し、全選手がラッシュガードのユニフォームを着用した。勝負のかかる2日目は選手の意思に任せたところ、慣れないラッシュガードではなく、従来のシングレットで登場。勝負を優先した。来春はどうなるか。高校レスリングの最先端を行くチームの闘う姿から目が離せない。