※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫) 全日本学生選手権、国体に続く優勝の97kg級の園田平(拓大)
「国体でも優勝できたので、勝って当たりまえ、という気持ちはあります」と、特別に喜ぶわけでもなく、余裕の表情の園田。1回戦からの3試合を、いずれも無失点のフォールかテクニカルフォールで圧勝し、決勝も第1ピリオドのフォール勝ちだった。
ただ、準決勝のことに話が及ぶと、「ちょっと…」と表情が曇った。相対したのは、インカレではテクニカルフォールで勝った石黒峻士(日大)だが、今年の世界ジュニア選手権に出場し(8位)、若手成長株と期待されている選手。今後のために実力差を見せつけておきたいところだった。
しかし第1ピリオド、相手にアクティブタイムを与えるなど積極的に攻めながら決定力に欠け、後半、タックルを受けて尻もちをついてしまった。タックル返しが不完全で、あわやフォールされそうな場面へ遭遇。辛うじてこらえたが、その後も2度脚をさわらせるなど(最終的には無失点)、失点したことで窮地を迎えることになってしまった。
「フォールされそうになったことで、焦ってしまい、頭が真っ白になってしまいました」と、振り返る。原因として考えられるのが練習不足。「言い訳にしかなりませんが」と前置きし、「国体で両ひざを負傷し、練習量が落ちていた。スパーリングができたのは1週間前。追い込む練習ができていなかった」と説明した。
決勝ではフォール勝ち、学生の第一人者を見せつけた園田
■2年半前の苦い思いを払拭した決勝の勝利
決勝は、大学入学直後(2014年4月)のJOC杯決勝の相手の吉川裕介(山梨学院大)。負傷でブランクのある選手なので、現在の力では園田の方が上と思われるが、JOC杯の時に右ひざの前十字じん帯を切り、手術のため長期の戦線離脱することになった因縁の相手だ。
負傷はアクシデントであり、恨みの気持ちを持っているわけではないが、やはり引っかかるものはあっただろう。それだからこそ、油断する気持ちはなかった。闘ってみると、準決勝のもたつきを返上するかのような速攻で第1ピリオド、8-0からのフォール勝ち。あらためて学生間の第一人者を証明した。
好調だった夏から秋の総決算は12月の全日本選手権。6月の全日本選抜選手権決勝では、階級を上げた赤熊猶弥(自衛隊)に0-6で敗れており、そのリベンジとともに日本一が目標だ。他に、国体決勝で勝ったものの、4-3の辛勝だった山本康稀(北海道・GENスポーツアカデミー)も追い越したとは思っておらず、強敵の一人と考えている。
今の勢いを持ち込み、日本一に上り詰めたいところ。「来年の世界選手権出場を目標に、あと1ヶ月ちょっと、頑張ります」と気合をこめた。