※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 8月の全日本学生選手権に続いて国体を制した成國大志(三重・青山学院大)
成國は「インカレで優勝していい流れだった。チャレンジャー精神でいけば、いい線はいくかなと思ったけど、まさか優勝できるとは」と、シニアでの初タイトルに喜びを隠せない様子だった。
昨年の国体は少年グレコローマン60kg級で2位。高校生活の有終の美を飾れなかったが、1年後には成年の部で優勝を果たしてしまうのだから、ポテンシャルには目を見張るものがある。
中学時代に5冠獲得とダントツの強さを見せた成國は、高校3年間、親元を離れて三重・いなべ総合学園高校に進んだ。中学、高校時代に何度も「将来はグレコローマンをやりたい」と、グレコローマンのような動きでフリースタイルも制した成國だが、青山学院大に進学して選んだ主戦場は、フリースタイル61kg級だった。
成國の最終目標はオリンピック。4年後の東京オリンピックも見据えている。スタイルや階級について「今は体づくりが大切な時期。ここ一番の大会では57kg級に挑戦しようと思いますが、毎回57kg級に落としていたら、体が縮んでしまうので、国体は61kg級にしました」と振り返る。成國が出場した三重県は57kg級に高橋侑希(ALSOK)というエースがいることも大きな理由だった。
決勝で闘う成國
「グレコローマンやる予定ではなかったのか?」と聞くと、成國は「体重の問題が大きいです。僕には59kg級というのが引っかかっていました」と返答。レスリングは体作りが成績を大きく左右するため、両スタイルで成績を残してきた成國は、体重を第一に考え、フリースタイルでやっていくことを決めたそうだ。
フリースタイルで国体を制したことで自信になったことがある。「高校時代よりも、バンバン、タックルで入れるようになった」と、攻撃力が大幅に向上したことだ。インカレ、国体と制して、来月には全日本大学選手権で学生2冠王者を目指す。成し遂げれば、青山学院大にとっては2002年66kg級の長島正彦以来2人目(グレコローマンは2人が達成)。もちろん1年生としては、さらに国体も含めた3大会制覇は初の快挙となる。
「青山学院大に進学したことで、周りから『オリンピックは目指さないんだね』とよく言われました。自分でちゃんとやれば、どうにでもなると僕は思っています。さらに最近の青学は環境も整ってきて、活気づいています。その流れに乗って、自分だけじゃなくて大学自体を盛り上げていきたいんです」。
青学の長谷川恒平コーチはこの秋、全日本コーチになることが決まった。日本のトップレベルを指導するコーチが所属にいることは、成國が言う「環境が整った」ひとつでもある。
「ここで強くなれると確信しています。内閣(全日本大学選手権)も頑張ります」―。1年生インカレ王者、成國の快進撃はまだまだ続く。