2016.10.12

【岩手国体・特集】転向2年目で初タイトル獲得…成年グレコローマン66kg級・川瀬克祥(岩手・岩手県体協)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 全日本選抜選手権1、2位を倒して優勝! 希望郷いわて国体の成年男子グレコローマン66kg級は、地元岩手県から出場した川瀬克祥(岩手・岩手県体協)が準決勝で6月の全日本選抜王者の高橋昭五(兵庫・日体大)を破り、決勝で同2位の澤田夢有人(静岡・日体大)を2度の4点技を決めてテクニカルフォール勝ち。シニアの全国タイトルを初めて獲得した。

 「優勝できてうれしいです。みんなに感謝しています。しっかりと実力のある選手に対し、自分のレスリング・スタイルで勝てたので自信になりました」。

 高校3年(2011年)の時の岩手インターハイで優勝して日体大に進学し、学生トップ選手として活躍するものの、学生タイトルは取れずに終わった。度重なる脳しんとうに悩まされていた川瀬は、一つの決断を下した。「グレコローマンに転向する」-。

 昨年の国体でグレコローマンに出場すると、元国体王者を破って2位の結果を残し、グレコローマンのトップで闘っていける可能性を見出した。川瀬は「このままレスリングをやめたくない。卒業してもレスリングを続けたい」と、競技を続ける場所を探していた。

 その時、声がかかったのが今回の国体開催県の岩手県だった。県の強化選手として盛岡に拠点を移したが、度重なる日体大への出げいこで地力を伸ばした。「日体大では松本隆太郎先輩の指導で、決勝で決まった反り投げや、(グレコローマン流の)飛行機投げを練習してきました。フリースタイルから転向した自分にしかできない技も磨いてきました」。

■転向して約1年、やっと本物のグレコローマンになりつつある

 昨年2位でも、浮かれることは一切なかった。グレコローマンを始めたばかりの川瀬自身が“なんちゃってグレコ”だったことを自覚し、たまたま強い相手を倒しただけと分かっていたからだ。しっかりと基礎から練習を積み、転向して約1年。「ようやく自分のレスリングがグレコローマンらしくなってきた」と、手ごたえをつかんできたところだった。

 フリースタイル時代に武器としていた差しと思い切りのいいタックルが、がぶられた時の対処法に役立っている。一般的に、がぶられるのは不利な体勢だが、川瀬の場合、そこからもぐりこんで組みついて倒したり、投げたりする技を持つ。「フリースタイルで培った技で生かせる部分を、もっと生かしていきたい」と、さらなる進化を誓った。

 課題については「差しの展開をもっと練習しないと」と振り返った。「自分でも得意な方ですが、もっとしっかりと足を踏み込んで差さないと、手をつかまれて投げられる」とグレコローマンの差しのレベルを痛感している。

 元フリースタイル専門を生かして、高校生の指導にも力を入れてきた。ふだんは盛岡工高で高校生の指導も行い、休みをもらうと種市高や宮古商高に出かけ高校生を鍛え上げた。「岩手県のために少しでも貢献したかった」と、約半年間、やれることは全力を注いできた。

 最終日の決勝で一番の声援を浴びたのは、川瀬に他ならない。「声援が本当に力になった。今後も現役を続けていきたい。全日本選手権で優勝して、世界でメダルが取れる選手になりたい」と、国体優勝をステップに更なる飛躍を目標に掲げた。