※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 中学生で2位の清岡幸大郎(高知・高知南中)と櫻井優史監督
6月の全国中学生選手権大会47kg級で優勝した清岡幸大郎(高知・高知南中)は、県予選を勝ち抜いて代表入りした。「高知県の代表なので(得点がつく)5位以上になって貢献したいと思った」と自覚は十分。「3回戦で前インターハイ王者の松井稜(岐阜・中京高)と対戦してみたい」と、前王者との対決を心待ちにしていた。
ハンディとなるのがルールの違いだ。中学生は2分2ピリオド制で、高校生のルールより1分少ない。後半のスタミナ切れが懸念されたが、ふだんから高校生の練習に参加している清岡はそのハンディを乗り越えた。3回戦、「自分は高校生に勝って出てきたのだから、絶対に勝たなくてはいけない」と、前王者の松井が相手でもひるまず闘った。ロースコアの試合となった末、終盤の松井のラッシュに耐えて2-1で振り切った。
目標にしていた高校トップ選手を下した清岡は、「今日は流れが自分にきていたので、行けるんじゃないかな」と、ポジティブ思考で国体の頂点を視野に入れた。決勝は高校1年生の森川との対戦だった。「昨年の全国中学生選抜選手権で負けた相手です。1度対戦しているので、対策も練れる」と、勝機を見出してマットに上がった。
前半に4点を取られて追う展開となったが、後半に1点を奪い、終盤にタックルでテークダウン。得意のアンクルホールドで逆転を狙ったが、「相手のディフェンスがうまかった」と反撃もそこまで。3-4と1点差で敗れてしまった。
決勝で闘う清岡幸大郎
「中学生で2番はうれしい? それとも…」と問うと、清岡は「悔しいです。勝てた試合でした」と切り返した。この悔しさは来月の全国中学生選抜選手権で晴らすことだろう。
清岡の大躍進に、高知県の櫻井優史監督は「同門の櫻井つぐみらの存在が大きい」と話した。全中では、そろって優勝したが、つぐみの方は女子史上7人目の3連覇。さらに先日の世界カデット選手権でも優勝している。「つぐみらが国際大会のメダルを獲って歓迎されているのを見て、清岡は『自分も負けるもんか』という顔をしていた」と振り返る。
櫻井監督は父親として娘の活躍に目を細める一方で、クラブの監督としては、「男子に、女子のように活躍したいなら、女子よりも厳しいことをしないといけないよ」とはっぱをかけてたという。
8月のリオデジャネイロ・オリンピックでは、弱冠20歳の樋口黎(日体大)が世界選手権の経験もないまま銀メダルを獲得。男女通して20歳前半の選手の活躍が光った。成人まであと5年の中学生の中には、「もうすぐ世界で闘える」と思った選手も多かったことだろう。
櫻井監督も「樋口選手の影響は大きい。小さいころからコツコツやれば、上でやれるチャンスがある」と話し、清岡は「来年はJOC杯で優勝して、世界カデット選手権に出たいです」と世界を見据えていた。