※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
新体制最初の国際大会で金メダル獲得の高谷大地(右=拓大)と松永共広監督
当初は成田空港に降り立つ予定だったが、ソウルまでの飛行機が遅れて乗り継ぎがうまくいかず、深夜0時近くに羽田空港へ到着するフライトに変わっての帰国。大学の寮に帰ることのできない時間で、空港周辺の宿探しをしなければならない状況となったが、国際大会初優勝の高谷の表情は明るい。
「うれしい。日本で勝てないことが続き、どうしようか悩んでいた時期に勝て、ひと皮むけたような気がします。やってきたことに間違いはないと思えました」と、喜びの第一声が出てきた。
勝因は「日頃、先生方の言われる通りの構えや攻め方がしっかりできたからだと思います。緊張することもなく、スパーリングのような気持ちでできたことがよかった」と言う。急に決まった遠征で、心身のコンディションづくりが難しかったことも予想されるが、「外国選手とできる機会をもらえてラッキー、と思いました」と、気持ちが前を向いていたこともよかったのだろう。
決勝の相手のビクトル・ラサディン(ロシア)は、この大会の2年連続チャンピオンで今年のロシア選手権61kg級2位の選手。2年前には湯元進一(自衛隊)を破っている。気合十分でマットに上がったが、相手の負傷で不戦勝だった。「その時は、やった、と思いましたが、後で考えると、やってみたかったし、勝っての優勝がよかったですね」と、この部分は悔やまれた。
大学1年生の時の2013年全日本選抜選手権で優勝し、翌年の世界選手権(ウズベキスタン)で7位に入賞。リオデジャネイロ・オリンピックの代表になってもおかしくない勢いがあったが、その後、停滞してしまった感は否めない。
「相手のうまさにやられていました」と、研究されてしまったことが一因と分析。今回は外国選手が相手ということで思い切って闘うことができ、殻を破ることができた。「外国選手には通用することが分かった。今度は日本選手相手の闘い方を再び勉強したい」と言う。
まだやるべきことは多くあるが、「久しぶりの表彰台の一番上でした。勝つと楽しい。これまで以上にやる気になりました」と気持ちは高揚。このままの勢いで、全日本大学選手権、そして全日本選手権に挑むことになる。「慢心せずに頑張りたい」と気合を入れた。
同行した松永共広監督(日本協会専任コーチ)は、新体制(井上謙二・男子フリースタイル強化委員長)となっての初の国際大会で金メダルという事実に、「いいスタートを切れましたね」と笑顔。
高谷は「日本でやる時より思い切りがよかった。日本では完全に手の内を読まれている(から思い切りに欠ける)」と、本人の分析と同じく、思い切りのよさを勝因に挙げた。もっとも、この優勝によって外国から研究されるわけで、そうなった時にも思い切りのよさが出せるか、違った試合展開ができるかが今後の課題。
「まだ、やらなければならないことはたくさんあります」と気を引き締めていた。