2016.05.11

【オリンピック世界予選最終戦・特集】和田貴広・男子フリースタイル強化委員長に聞く

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(聞き手=池田安佑美)


 ――予選がすべて終わって、オリンピック出場枠は2枠にとどまってしまった。

 「最低でも、もう1、2枠増やすことを目的にやってきたので残念。全日本選手権が終わってから、1位と2位の選手を中心に強化してきたが、本番で取り切れない、守り切れないといった部分が出た。連戦、連戦でコンディショニングが合わないところもあった。」

 ――きょう(最終日)の試合を振り返ると。

 「65kg級の藤波勇飛は、ジュニアだが十分な実績と経験があるので、可能性は高いと思っていた。JOC杯に出ていたが、その後はコーチがついて疲労を抜きながらコンディショニングを図ってきた。よくやったと思う。86kg級の松本真也に関しては、予選大会を1回休んでの再トライ。ひざのけがもあって十分な練習はできなかったが、その中で集中して練習し、尻上がりに内容は良くなってきた。ベストを尽くしたと思う。

 97kg級の山口剛はアスタナ(アジア予選)、モンゴル(世界予選第1戦)と、負けはしたが、内容は上がってきたと思っていたが、練習中のけがで、今回の出場を断念せざるを得なかった。急きょ山本康稀にスイッチしたが、経験が十分でなく、実力差があった。山口に関しては重量級でオリンピックに行けるチャンスがある選手だったので、このけがは悔いが残る。

 125kg級の田中哲矢は1回目、2回目に出た山本と練習での内容に差がなかったので起用したが、国際的な経験が足りなかった。追いこんで相手をばてさせることはできても、そこからのつながる技がない。重量級に関しては、国際的に通用するレベルの選手がいないので今後は、そこも考えていかないといけない」

 ――選考された選手と、選手の状態が合っていない部分もあったのでは。

 「学生が多く、授業で合宿に参加できなかったり、けががあってコンディショニング的な部分で追い込めないところはあった。昨年以前の全日本選手権の優勝者と今回の優勝者でメンバーががらっと変わったところもあったが、1位と2位で上がってきた選手を強化するのが、強化委員会の仕事。その選手をここで勝たせるためにやってきた」

 ――出場枠を取った2人には、リオデジャネイロ・オリンピックへ向けて、どういったことを期待するか。

 「ともに世界のトップレベルにいると思う。いや、トップレベルでなければ、オリンピックの出場権は取れない。オリンピックまで時間が限られているが、しっかりと強化してメダルを取らせたい」

 ――藤波選手など、2020年東京オリンピックへ向けていい選手が出てきた印象を受けた。

 「大学生であそこまで闘えるのは、東京へ向けて明るい材料。彼以外にも若い優秀な選手が育ってきている。彼らを強化することが大事です」