※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 全国中学生選手権に続く優勝の榊流斗(東京・JOCアカデミー)
全中では同じ2連覇の森川海舟(東京・AACC)と沼尻直杯を争った。内容が無失点で全6試合中、決勝以外の5試合は、すべて10-0のテクニカルフォール勝ちという圧勝が評価されて受賞した。
「今大会は、(森川)海舟が優勝したら3連覇なので、MVPは頑張っても獲れないかなと思っていました」とあっけらかんと話したが、榊が最優秀選手賞より気にしたことは、試合の内容だった。「今回は正直、全中と比べると全然内容がよくなかった。全中が80点なら、今回は50点です」。JOCアカデミーの江藤正基コーチも「全中のときの方がプレッシャーがなく、伸び伸びとやっていたように見えた」と振り返った。
決勝では鮮やかなタックルを決めて快勝したように見えたが、「もう少し自分から攻めていきたかった。受け身になって足も動かなかった。もっと練習しないといけないと思いました」と振り返った。
厳しい条件だったのは、試合間隔が4ヶ月以上も空いていたことだ。「全中で優勝して以来の試合でした。試合の感覚を取り戻すのが大変で、いい動きができなかった」。
女子の場合は10月に全日本女子オープンがあり、その試合を経てからこの大会に臨めるが、男子は地方大会にエントリーしない限り、出る大会がない。
榊は初日に2点を失い、最終日の決勝で判定勝ち。「全試合無失点でフォールかテクニカルフォール勝ち」と定めた目標をクリアできなかったことが、50点の自己採点につながったのだろう。榊は「気持ちをしっかり入れていかないといけないと、両親やコーチに言われていたのに、自分が仕上げられなかった」と悔やんだ。
中学生最後の試合で優勝したものの、課題が残ってしまった榊。だが、高校に進学すれば、春はJOC杯から始まり、関東高校大会、インターハイと、夏場までに試合ラッシュ。さらに全国の選抜メンバーになれば、海外遠征や合宿も入ってくる。「大変だろうけど、試合が楽しみです」と、約4ヶ月後から始まる高校生生活が待ち切れない様子だった。