※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) 小山内光将(日大)
日大の赤石光生コーチ(1984年ロサンゼルス・オリンピック銀メダルほか)の甥(おい)。血筋は素晴らしいものがあるが、2位、3位が多く、埼玉・花咲徳栄高時代から通じて優勝には縁がなかった。
「初めてのタイトルですので、とてもうれしいです」と喜びの第一声を発した小山内は、「思い切りのよさが、ばっちりはまったと思う」と勝因を振り返る。学生王者の奥井と対戦でも得意なパターンがうまく決まれば勝てると思っていたそうで、「思い通りに決まりました」と、満足そう。
決勝も、リードされて、さらにタックルで攻められたところを、見事なカウンターの投げ技が決まり、スコアと試合の流れを逆転した。「カウンターでタイミングよく投げるのが得意技です。自分の持ち味を出すことを考えていたら、うまく決まりました」と振り返った。 決勝、相手の突進をカウンターで投げた小山内(青)
この階級は、昨年の全日本学生選手権決勝を奥井と浅井翼(拓大)という1年生同士が争い、今年の同選手権も2年生となったその2人の決勝となるなど、上級生の旗色の悪い階級だった。そのことに話が及ぶと、「ここで、また2年生に取られたら上級生のメンツにかかわります。あの2人をつぶして、今度は自分が一番になると、いつも考えていました」と語気を強めた。躍進する下級生に対し、秘めたライバル意識があったようだ。
赤石コーチと同じ遺伝子を持つことで、富山英明監督などから「実力を出せば勝てるんだぞ」と激励されることが多かった。「おじさんほど強くはなれませんでしたが、どこかで同じ成績を残したいと思っていたました。(赤石コーチはこの大会)3連覇しているんですよね(注=正確には2階級にわたって4連覇)。今回優勝したことで、少しは近づけたかな、と思います」と、指導してくれた叔父さんに対しても感謝の気持ちを表した。
初めて経験する表彰台の一番高いところを、「最高に気持ちがよかった」と話した小山内は、団体では昨年の日大の優勝に「74kg級3位」という形で貢献している。今年も、自身と97kg級の山本康稀が優勝したことで、優勝圏内にいて最終日を迎えることになった。
「去年は4年生が支えてくれた優勝でした。今年も自分と康稀(山本=ともに4年)が優勝し、流れをつくることができました。明日は全員3位以内に入れると思っています。絶対に優勝します」と、自身の初優勝のあとは、団体2連覇へ向けてチームを全力でバックアップする。