※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 故郷に錦を飾った山口海輝(千葉・柏日体)
和歌山・那智勝浦の出身。風光明媚(めいび)な土地で育った生粋の“那智っ子”だ。「小さい頃はこの体育館でよく遊んでいた。地元で優勝できて本当によかった」と笑顔を見せた。
巡り合わせがよく地元国体への出場がかなったが、山口は「千葉」と書かれたシングレットを身にまとっていた。今年4月から地元を離れ、大澤友博監督率いる柏日体高校に進学したからだ。「本当は“和歌山”として出場したい気持ちもあった」と複雑な胸中を吐露したが、生粋の地元選手である山口には、常に和歌山県勢と同じ声援が送られていた。
真骨頂だったのは決勝戦。成年と少年が同時に行われ、山口の試合は、成年61kg級に出場して決勝へ進んだオリンピック銅メダリストの湯元進一(和歌山・自衛隊)とほぼ同じ時間帯だった。湯元が攻撃を仕掛け、山口が得点を重ねると、会場は大盛り上がり。終了時間もほぼ同じで、山口は「ガッツポーズのタイミングも一緒だった。湯元選手と同じステージで勝ててうれしかった」と振り返った。
■来年は高校三冠王に挑戦!
強くなるため地元から千葉に国内留学している山口に、「妥協」の二文字はない。8月のインターハイでは1年生ながら2位になったが、「全中(全国中学生選手権)も2位だった。インターハイでも2位。2位ばかりなので、優勝しないと嫌だと思った」と、国体では優勝だけを見据えていた。エントリーを見てインターハイ王者の乙黒拓斗(東京・帝京)が60kg級に出場することを知ると、優勝への気持ちがより強くなったそうだ。
1、2回戦こそ動きが硬かったものの、「決勝はいいイメージができて集中できた」と攻撃の手をゆるめずに相手を攻めたての優勝だった。「55kg級は自分ということを示していきたい」と力強く語ったが、来年は乙黒がまた55kg級にエントリーしてくる可能性は高い。「拓斗君が戻ってきたら、また僕がチャレンジャーとして頑張りたい」と話した。
記念撮影では同じ和歌山県勢とともに収まった。そこには74kg級で高校三冠を達成した吉田隆起(和歌山北)の姿も。山口は「吉田先輩は憧れの先輩。来年、僕も(三冠王に)挑戦したい」と目を輝かせていた。