2015.07.17

【タレント発掘・育成コンソーシアム事業報告(4)】国内育成プログラム/第1回女子カデット世代育成キャンプ

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

タレント発掘・育成コンソーシアム事業報告④
国内育成プログラム 第1回女子カデット世代育成キャンプ

JWF タレント発掘・育成コンソーシアム
清水 聖志人


 2011年に制定した「スポーツ基本法」は、我が国におけるスポーツの施策策定および実施を国が責任を持って行うことを明確に示した。それを受けて2012年に策定された「スポーツ基本計画」に則り、文部科学省は新たな事業を実施している。その中の一つが、独立行政法人日本スポーツ振興センターより、本協会が受託しているタレント発掘・育成コンソーシアム事業である。

 本事業は、全国規模で有能なタレント・アスリートを継続的に見出し、最適な育成・強化を図る手法・仕組みを調査研究・開発し、これらの手法をもとに、地域タレントからメダルポテンシャルアスリートまで確実に引き上げるシステムの構築を目指している。

 2015年7月1日(水)~7月3日(金)の期間、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターにおいて、第1回女子カデット世代育成キャンプを実施した。本キャンプは、女子カデット世代の優秀なタレントを対象に、高品質な機会(トレーニング、コーチング、教育プログラム、形態・フィットネスデータのフィードバックなど)を提供することを目的としている。また、本キャンプ中に実施したプログラムの結果を分析し、エビデンスに基づくプログラムの開発を推進する。今回のキャンプでは日本レスリング界の将来を担う女子カデット世代の14名が参加した。

 レスリングのタレント発掘・育成コンソーシアムは、「インテリジェントレスラーの育成」をコンセプトとしており、全国のU-12世代、U-15世代、カデット世代、ジュニア世代から優秀なタレントを発掘し、国内及び海外育成プログラムによって育成を行う。

 本キャンプは、育成プログラムを実施すると同時に、海外育成プログラム対象者の選抜機会としても位置付けており、キャンプ中に実施したプログラムの結果を分析し、海外育成プログラム対象タレントの選抜を行った。

 本事業は、高度レベルの競技活動を通して得た経験や知識を基に、日本のリーダーとなれるアスリートの育成を目指すため、「教育プログラム」に注力しているのが特徴である。今回キャンプにおいては、「情報の活用」と「オリンピズム」にフォーカスした教育プログラムを展開した。

 また、女性アスリートの育成・支援プロジェクト(FALプロジェクト)の協力を得て、骨密度とヘモグロビン値の測定データを測定し、女性アスリートの三主徴(運動性無月経/利用可能エネルギー不足/骨粗鬆症)のスクリーニングを実施した。カデット世代の国内育成プログラムにて、女性アスリート支援のためのプログラムを実施したのは初めてであり、今後は、実態を踏まえ、教育プログラムや啓蒙に繋げることが肝要となる。

 マットトレーニングにおいては、この世代の技術的課題について徹底したコーチングを行ったうえで、ポジション別の攻防やスパーリングを中心に展開した。

 また、国立スポーツ科学センターの協力により、ナショナルチームが行っている内容と同様の形態測定、フィットネス測定を実施し、キャンプ最終日に測定データのフィードバック及び、ナショナルチームやジュニア代表データとの比較を基にフィットネスレベル向上に向けたカウンセリングを実施した。

 本事業は、日本レスリングが永続的にメダルを獲得するための発掘・育成システムの構築を目指すものであり、独立行政法人日本スポーツ振興センターより事業の成果報告が求められる。このことから、本協会に関わる全ての関係者が方向性を共有し、事業の推進に努める必要がある。

教育プログラム「情報の活用について考える」:専修大学 久木留 毅 教授

教育プログラムの様子:スマートフォンを用いたグループワーク

教育プログラム「オリンピズムについて考える」:フェリス女学院大学 和田 浩一 教授

教育プログラムの様子:オリンピズムをテーマとしたグループディスカッション

フィットネス測定:300M×6インターミッテント

フィットネス測定:ロープ昇降テスト

FALプロジェクトによるヘモグロビン値測定

FALプロジェクトによる骨密度測定