※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子) 両スタイルを制覇した奈良勇太(日体大)
昨年の全日本学生選手権の男子グレコローマン98kg級で1年生王者に輝いた逸材だが、その3ヶ月後にあった秋季新人選手権では両スタイルとも2位に終わり、まだ本物の実力がともなっていない事実を露呈してしまった。この優勝で着実に前進したことが証明されたと言えるだろう。
1週間前の全日本選抜選手権にも出場し、山本雄資(警視庁)相手に初戦(2回戦)敗退。今回の新人選手権では、その反省点を振り返りながら、技を確認しつつ試合を組み立てたという。 4点となる豪快なバック投げが爆発
グレコローマンでも、準決勝まで失点0のフォールとテクニカルフォールで勝ち進む圧倒的強さで勝ち進んだ。しかし、決勝では川上達也(大東大)と対戦し、あわやフォール負けという場面も作られてしまった。
「少し油断してしまいました。後半は相手もばてていたので、練習量では負けていないはず、取り返せる、と信じて攻めました」との思い通りに、後半に4点のバック投げを繰り出し、8-6でポイント勝ちをおさめた。 アレクサンダー・カレリンと闘う父・英則さん(1990年世界選手権)
父・英則さんは日大~警視庁で活躍した名選手で、世界選手権に3度出場。1990年のイタリア大会と91年のブルガリア大会では、不世出のレスラー、アレクサンダー・カレリン(ロシア)と闘い、日本選手で唯一、カレリンズ・リフトの洗礼を受けている“貴重な”選手だ。
父親がかなえられなかったオリンピック出場を目標に、奈良が世界へ飛躍する。