※本記事は日本レスリング協会公式サイトに掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美)
11年ぶりに岩手県で行われたレスリングのインターハイ。今大会は2つの“イレギュラー対応”に迫られた。ひとつは震災による会場変更。もうひとつは、昨年の沖縄県開催をもってインターハイの単独県開催が終了し、今大会から地域ごとのブロック大会となって青森県を中心とする岩手県、秋田県の3県合同開催となったこと。
学校対抗戦で、岩手県1位として出場した盛岡工・巣内哲司監督は「誘致が決まってから3年ほどしかありませんでした」と振り返る。(右写真=盛岡工ベンチで選手を見守る巣内監督)
昨年の沖縄大会では、地元の沖縄県は誘致確定後に6年がかりでキッズ、中学、高校と一貫した強化体制をしき、学校対抗戦で3位(浦添工)、個人戦でも準優勝1人、3位1人という結果を残した。今シーズンもその勢いを保ち、念願の個人優勝者も出た。
ところが岩手県では、同じようにいかなかった。巣内監督は「誘致が決まってスカウトに走ったが、1年目は思うようにならなかった」と無念そう。チームの核となる3年生はわずかに3人で、主力は2年生だった。
■初戦で関東3位の太田商を破る!
盛岡はキッズレスリングがなく、柔道や相撲からの転向者を育てて強化する体制をとっていた。インターハイ再来をきっかけにキッズに着手したかったが、巣内監督は「時間が足りなかった」と残念そうに振り返った。
だが、盛岡工のメンバーは地元の声援に全力で応えた。初戦(2回戦)の相手の太田商(群馬)は関東高校選抜大会3位の実績で、1回戦の新潟県央工(新潟)を6-1で撃破して勝ち上がってきたチーム。巣内監督は「(今のチームは)太田商が圧勝した新潟県央工にも1-6で負けていたので、初戦も厳しいかもと思った」と本音を吐露したが、軽量級3階級のタックルがさえて、3-0とスタートダッシュに成功!(左写真=フォール勝ちした55kg級の佐々木昭治)
中量級からは「66㎏級、74㎏級、84㎏級は全部66㎏級の選手を配置せざるを得なかった」(巣内監督)という事情のため、予想通り太田商に取られて3-3のタイになり、120㎏級に勝負が回るというドラマチックな展開となった。
不思議と体育館全体が沸いていた。120㎏級の工藤悟は84㎏級の選手。相手の並木誠はガチで120㎏級の選手だ。パワーで押されつつも声援を背に、工藤はタックルで相手を押し出すと、第2ピリオドは後半にラストポイントで追いつき、1-1での勝利。運営者全員が手を止めて喜びを分かち合った。
■2年生主体のチームで今後も期待大!
ベスト8をかけて闘った3回戦の鹿屋中央(鹿児島)に1-6で敗退したが、フォールの体勢に持ち込んだりと決してワンサイドゲームではなかった。巣内監督は、生徒に対して「勝負に対してこだわりを持つことと、最後まであきらめない心を持ってほしい。(強豪の)鹿屋中央に圧倒的に負けなかった。ちょっとの差だった。勝ちに対するこだわりの差だけ。(関東3位の)太田商に対して諦めない試合がができたんだから」と熱いメッセージを送った。(右写真=鹿屋中央選手にタックルで応戦する盛岡工55kg級の佐々木昭治)
わずか3年でも、気持ちで地元の声援に応えるチーム作りをしてきた盛岡工。「主力が2年生だから、また来年がんばります」と巣内監督の挑戦が終わることはない。