※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
JOC杯に続いて優勝を勝ち取った松坂誠應(日体大)
2大会の間に行われた東日本学生リーグ戦でも74kg級で5試合に起用され、2年生にしてレギュラーを獲得(2勝3敗)。同級はこれが最後の大会となり、世界ジュニア選手権の84kg級を経て、その後は86kg級に専念する。フリースタイル重量級でのナンバーワン成長株と言える活躍だ。
■左肩痛で臨んだ決勝は0-4からの逆転勝利
長崎・島原高校時代は、全国高校生グレコローマン選手権と国体グレコローマンで2位になったのが最高。専門のフリースタイルでは、全国高校選抜大会でベスト8、インターハイでベスト16。「全国2位」という成績があるので、まったくの無名選手というわけではないが、フリースタイルで芽が出なかった選手が、2年生にして日体大のリーグ戦レギュラーを取り、世界ジュニア選手権へ出場すると思った人は少なかったはずだ。 決勝で闘う松坂。序盤の劣勢をはね返して優勝
ふつうの状態なら、出合い頭に4点を取られても持ち直し、簡単に逆転できたかもしれない。しかし、試合前から左肩を痛めており、準決勝までに悪化させたこともあってか、なかなかエンジンがかからない。3-7などと差が縮まらず、第1ピリオド終了直前にやっと8-8へ。厳しい闘いだった。
そんなコンディションの中ででも優勝できたことは自信につなげてもよさそうだが、「そんなに高いレベルの大会ではありませんから、自信とかにはならないです」。新人選手権の優勝では満足しないという気持ちがありありで、「86kg級としては体が小さい。もっと頑張らなければならない」ときっぱり。この向上心こそが、飛躍の原動力なのだろう。
■頂点を目指し、早くから日体大への進学を希望
島原高校といえば長崎県有数の進学校で、生徒の半数以上は国公立大へ進学。レスリング部も練習のために勉強をおろそかにすることは許されない。強豪高校は朝と放課後の1日二度練習が普通だが、同校の場合、朝は補講があるので練習はやっていない。(クリック=2009年8月掲載「【特集】島原の乱2009! 進学校・島原高校の強さの秘密!」)
松坂も「赤点を取って追試を受けるようになったら、試合に出られないこともありますので、勉強もしっかりやりました」という高校生活をおくった。そのことが原因で全国王者になれなかったわけではないだろうが、「やるからには頂点を目指したい。そのためには日体大しかない」と、早くから日体大への進学を希望。 2012年全国高校生グレコローマン選手権決勝で奥井眞生と闘う松坂(青)
■肩のけがを治し、パワーアップして世界ジュニア選手権へ
目指すものをしっかり持っている選手は、成長が違う。昨年のこの大会はグレコローマン74kg級で優勝し、進学後の初タイトルを取ったが、本職はフリースタイル。1年間をかけて十分に実力をつけ、今年、世界ジュニア選手権に出場できるまでに実力をつけた。
今年3月に下級生が入ってきて「頑張らねばならず、自覚ができたことで変わったような気がします。勝てるようになって練習が楽しくなってきました」と、後輩の突き上げとJOC杯での優勝が大きな転機となった。リーグ戦に起用されたことも、「反省は多いけど、自信にはなっています」と話す。今が、レスリングが一番楽しい時期なのだろう。
世界ジュニア選手権は初めての国際大会で、期待と不安の比率は「半々くらい」とのこと。「一戦一戦を大事にしたい。最低でも入賞したい」と、一段ずつ階段を上がっていく腹積もり。7月は肩のけがをしっかり治すとともに、世界の84kg級で通じる体づくりに主眼をおき、真夏の決戦に向かう。
文武両道を貫いてきた選手の世界での活躍が注目される。