※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《世界選手権へかけるシリーズ》
男子フリースタイル | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
男子グレコローマン | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
女 子 | 48kg級 | 51kg級 | 55kg級 | 59kg級 | 63kg級 | 67kg級 | 72kg級 |
(文=増渕由気子)
3度目の正直でメダルを取る-! 男子グレコローマン74kg級で3度目の世界選手権代表をつかんだ金久保武大(ALSOK=右写真)は、メダル獲得に燃えている。
高校時代は柔道部に所属し、レスリングを始めたのは大学入学後で、競技歴は今年で8年。他の選手に比べると圧倒的に短いにもかかわらず、2010年は世界選手権初出場で5位となり、グレコローマンの新星として注目された選手だ。
だが、グレコローマンの中量級は世界で最も競技人口が多いとされる激戦階級。真価が問われる翌2011年の世界選手権は2回戦敗退に終わり、その後のロンドン・オリンピック予選も勝ち抜けなかった。その屈辱をバネにし、3度目の世界選手権の今回は「メダル取りたいです」と表彰台を目指している。
■競技歴8年で、ピリオド制ルールしか経験がない
世界選手権以外の国際大会の主な記録は、2012年のアジア選手権(韓国)での2位があるが、そのほかの国際大会では、まだ結果が出ていない。その理由として、金久保は、“国内での不覚”を挙げた。一昨年の全日本選手権では初戦で福田翼(当時拓大)に敗れて、一時はロンドン・オリンピック代表から遠ざかった(過去の実績で浮上)。 2010年の世界選手権で初出場ながら5位に入賞した金久保
そんな金久保にとって、今回は試練の大会になるかもしれない。2分3ピリオドの2ピリオド先取方式だったルールから、2004年のアテネ・オリンピックまで採用されていた2ピリオドの総得点を競う方式になったことだ。
金久保は2004年のアテネ・オリンピックのレスリング競技をテレビ観戦して興味がわき、柔道からレスリングに転向した選手。多くの世界選手権代表はキッズや中学時代などにトータルポイント制のルールを経験しているが、「大学に入学した時は、すでにピリオド制ルールでした。旧ルールは、グラウンドの時間が基本ありましたので、グラウンド中心の練習をこなして、ここまできました。自分のレスリングを変えなければいけない」と話し、試練を迎えていることを告白した。
「今のルールでは、6分間のうちグラウンドの攻防は1分くらい。スタンドで相手をテークダウンさせるか、優勢をとってコーションを取るしかグラウンドで攻撃することはできません」と、スタンドの重要度を話した。
まずは構えから修正している。以前のスタンドではディフェンスが基本で、脇を閉めて前に出て後半勝負というのがセオリーだった。「新ルールでは、技の展開が必須なので、脇をしめるより、差して前に出るのが基本です」。
■スタンドからの攻撃で世界5位になったスタイルを取り戻せ! 全日本合宿で練習する金久保
やる気の源としては、7月下旬から8月上旬の韓国遠征の影響が大きい。約1年半ぶりの海外で刺激的だったことはもちろん、韓国チームの中には、ロンドン・オリンピック男子グレコローマン66kg級金メダリストのキム・ヒョンウ(今年は74kg級にエントリー)がいて、何度も手合せをする機会があった。
「投げ、差し、くぐりタックルとなんでもできる選手でした。弱点がないのです。グラウンドもできる。僕はグラウンドが得意だから、グラウンドで勝負という考えがありましたが、何でもやれるようにならなければいけないと思いました」と、意識の向上につながったようだ。
金久保がレスリングを始めるきっかけとなった憧れの日体大・松本慎吾監督は、「OBの僕にも、新ルールの対策をアドバイスしてくれるし、今でも練習の相手をしてくれる。本当に感謝です」と、金久保を技術的にもメンタル的に支えている。その松本監督の遺伝子を受け継ぎ、2010年には5年半のキャリアで世界の上位に食い込んだ。その金久保なら、このルール改正の向かい風を、追い風に変える力があるはずだ。
金久保武大(かなくぼ・たけひろ=ALSOK) 3大会連続3度目の出場
1986年7月1日、神奈川県生まれ、27歳。東京・東海大付高輪台高~日体大卒。高校時代まで柔道選手。日体大へ進んでからレスリングを始め、2008年全日本学生選手権優勝。2010年には全日本選抜選手権で勝ち、世界選手権でも5位に入賞。2011年も世界選手権に出場した。2012年はアジア選手権2位のあと、ロンドン・オリンピック最終予選出場のチャンスをもらったが、生かせなかった。174cm。
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◎金久保武大の最近の国際大会成績
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◎金久保武大の世界選手権成績
※2012年2月以降、なし