(文・撮影=布施鋼治)
2026年全日本学生選手権(インカレ=8月20~24日、東京・駒沢体育館)を前に、大体大で主将を務める茂野颯良(4年)と西日本学生新人選手権優勝の辻田陽咲(1年)が関東に武者修行に出かけた。日程は10泊11日で、行き先は全日本合宿、日大、日体大の3つ。
「こんなに長く大阪を離れるのは初めてだったので、最初は不安でした」(辻田)
きっかけを作ってくれたのは大体大で指揮を執る湯元健一監督。まず8月5~10日、東京・味の素トレーニングセンター(NTC)で実施の全日本合宿に推薦という形で参加できるようにしてくれた。現在、湯元監督は全日本チームで男子フリースタイル強化委員長も務めている。
この全日本合宿には、やはり新人選手権優勝の庵野琥士朗と松本理暉(ともに1年)も参加。全員がNTC近くのホテルに宿泊して通った。資金面でで援助してくれた三恵海運の髙田肇相談役からは「インカレ前に、自分がどれだけできるか試してこい」とハッパをかけられたそうだ。
2人にとって初めての全日本合宿は緊張の連続だった。「選出されたわけじゃないですからね。合宿初日なんか、結構肩身が狭くて、おびえながら練習していました」(辻田)
湯元監督からすれば、そうなることはある程度予見できた。「かわいい子には旅をさせろ」ではないが、全日本のトップレベルを体感しておけば、少なくともインカレで緊張することはなくなる。辻田は湯元監督からかけられた言葉をはっきりと覚えている。「胸を張って、当たりにいってこい」。その一言に背中を後押しされ、合宿第2日から、2人は遠慮なく先輩たちに当たっていった。
「僕はリボヴィッツ和青(全日本選手権・男子フリースタイル97kg級2位)と同い年なんですけど、彼なんかは全日本合宿でも、おびえることなく先輩たちに当たりにいく。そういう場所でも遠慮なくいける人が強いんじゃないかと思いました」(辻田)
全日本合宿が終わると、2人は吉田ケイワン(三恵海運)の家に泊まり、日大と日体大の練習に交互に参加した。
取材日は日大での2回目の練習。休憩中には励まし合いながら、日大の選手たちにぶつかっていく姿が印象的だった。茂野主将は「日大はリーグ戦で優勝したチーム。めっちゃいい経験になりました」と振り返る。
「練習相手は、ふだんやらない人ばかり。実力の高い選手が多い中、自分の技をどれだけ出せるか、今やっていることをどれだけ発揮できるか、ということを考えながらやりました。その中で質の高い練習ができたと思います」
茂野主将は男子フリースタイル79kg級を主戦場にしている。階級が同じ、あるいは近い松岡大洋(4年)や吉田アリヤ(2年)との練習をやることで大きな収穫を得たという。
「階級が違うと、うまくいくはずの技がかからなかったりする。でも、同階級の選手を相手にすると、どこまでその技が効いているのかを把握できる」
日大の練習に慣れていくうちに、大体大との違いも感じていた。「日大の道場は結構狭い(2面マット)こともあって、(ぶつかりそうになると)周りが間に入ったり、(汗がたまると)すぐマットを拭いたり、声をかけあったり、和気あいあいというムードの中やっている印象を受けました」
もっとも、仲の良さなら茂野と辻田も負けてはいない。大体大は浪商付属中学、高校と合わせの一貫校。レスリング部も中学生から大学生までそろって練習することが多い。それゆえに先輩・後輩の分け隔てがなく仲がいい。
2人に「大学4年と1年の関係に見えない」と水を向けると、茂野は「本当にそうですね。(立場は)逆かもしれない」と笑い飛ばした。
滞在中、2人の面倒をみていた吉田ケイワンは「2人とも真面目」という印象を抱いた。「ずっと一緒にいたわけではないけど、しっかり考えながら練習に取り組んでいましたね」
同じ所属の髙橋夢大とシェアハウスの形で一緒に暮らす吉田にとっても、短期間ながら茂野と辻田と一緒に暮らしたことは大きなプラスになったという。「(高橋と)2人だけでいると、2人だけの軸しか見えないじゃないですか。でも彼らと会話することで、『ああ、そういう考え方もあるんだな』という気づきがありました。また武者修行に来るとしても、大歓迎です」
大体大選手の真夏の大冒険-。その成果は、インカレで早くも発揮されるのか。