昨年のインターハイで1年生王者に輝き、今年は東京都予選で敗れて出場できなかった60kg級の薬野柑太(東京・自由ヶ丘学園)が、全国高校生グレコローマン選手権で王者に輝いた。「インターハイ不出場のうっぷんをぶつけた?」との問いを否定せず、「とりあえず、よかった」と“王者復帰”を振り返った。
もっとも初戦の2回戦、髙橋叶和(滋賀・日野)戦から苦しい闘いで、一時は1-5とリードされる展開。ラスト50秒までそのスコアが続き、巻投げで逆転して勝つきわどい試合(最終的に11-7=注:電光掲示板のスコアは13-7)。4回戦の花盛陽向(兵庫・猪名川)戦も、コンスタントにリードしていたものの、自滅技もあって追い上げられ、最後は10-9での勝利。4月のJOCジュニアオリンピックでは第1ピリオド、テクニカルスペリオリティで勝っていた相手で、苦しい初日の試合だった。
強豪がスタートで苦戦するケースとして、減量がうまくいかず、体が動かないことが原因の場合がある。薬野はさほど減量はないそうだ。苦戦の原因は、得意のパーテールポジションからの攻撃がうまくいかず、「気持ちが空回りしてしまったから」とのこと。
だが、勝ち進むことで気持ちや闘い方を変えていくことができるのも、強豪選手の特徴。翌日最初の試合(準々決勝)、今年のインターハイ55kg級王者の小此木仁之祐(宮崎・櫻美学園)との“インターハイ王者対決”では、4点となるリフト技を2度決め、あっさりと勝利。完全に立て直した。
小此木はフリースタイルで昨年のU17世界選手権で優勝している強豪。しかし、グレコローマンでの実績はほとんどなく、練習もフリースタイルが中心の選手。薬野はグレコローマンで国民スポーツ大会とJOCジュニアオリンピックで優勝しており、分があるのは明白。薬野も「グレコローマンでは負けない、という気持ちはありました」と、自信を見せた。
この勝利で気をよくしたのか、檜山惇也(埼玉・花咲徳栄)との準決勝、清水悠希(京都・丹後緑風)との決勝も、ともにテクニカルスペリオリティで快勝。初日にもたついた内容を返上する強さを見せた。気持ちの切り替えには、田野倉翔太監督からのアドバイスもよかったそうで、「気持ちの立て直し」という意味でも、収穫のあった大会だったと言える。
小此木とのフリースタイルでの試合を見てみたいところだが、国民スポーツ大会は薬野がグレコローマンに出場予定なので、実現しない。「違うスタイルのライバルとして、お互いに高めあいたい」と話し、このあともライバル関係は続きそう。もっとも、薬野は両スタイルで闘いを続ける予定。全国高校選抜大会優勝の実績があるので、12月の全日本選手権には両スタイルにエントリーすることを明言。そこで対戦の機会があるかもしれない。全日本選手権のマットでインターハイ王者同士の対戦が実現するか。
全国王者奪還を果たし、インターハイ予選落ちの雪辱を果たした薬野だが、国際舞台での“リベンジ”も成し遂げなければなるまい。5月のU17アジア選手権(ベトナム)の男子グレコローマン60kg級出場のチャンスを得ながら、初戦でウズベキスタン選手にテクニカルスペリオリティで敗れ、敗者復活戦に回れず下位に低迷してしまった。
「世界で通用するには、まだまだ」というのが実感。世界では、「初戦から強い選手が相手ということもある」ことを知り、油断の入る隙間はなさそう。
今年は、日韓高校親善大会を除いて、このあと国際大会はないので、まず国民スポーツ大会で勝ち、全日本選手権での上位入賞が目標とのこと。「未熟な部分はたくさんあるけど、去年よりはレベルアップしていると思う」と話す。1年生インターハイ王者がシニアの舞台へ挑み、将来の国際舞台での飛躍を目指す。