愛知・名古屋アジア大会の会場で実施された2026年全日本社会人選手権。男子フリースタイル61kg級に2024年世界選手権同級優勝の小野正之助(米国ペンシルベニア州立大)が出場し、4試合を無失点のテクニカルスペリオリティで勝ち、強さを見せた。日本での試合は、世界選手権出場を決めた2024年の全日本選抜選手権以来。
小野は「日本での試合はほぼ2年ぶり。しっかり勝てたことはホッとしている」と安堵の表情。世界一に輝いたときは、2021年東京オリンピック57kg級優勝のザウール・ウグエフ(ロシア)と前年の同級世界王者のビタリ・アルジャウ(米国)を破っての快挙で、一気に「世界のONO」として知名度になった。昨年の世界選手権代表に名前がなく、世界から「ONOはどうした?」という声が少なくなかったのは事実。
小野は「(世界一は)2年前のことですからね…。世界のONO? いえいえ、松江市(地元)のONOくらいで考えています」と謙そん。同級のエントリー選手を知り、「みんな強い」と気が引き締まり、米国から帯同してもらったセコンドと練習パートナーとともに、勝つことに万全を尽くした。
試合は、1回戦から世界王者の実力をフルに発揮して勝ち進み、決勝は57kg級で2024年アジア王者、昨年の学生王者などの実績を持つ弓矢健人(イーライフグループ)と対戦。やはりスピードある攻撃で圧倒し、3分18秒、10-0のテクニカルスペリオリティ勝ち。4試合を無失点で勝ち抜いた。
試合に出る目的は、12月の全日本選手権出場の資格(2位以上)を取ることと、「ペンステート(ペンシルベニア州立大)でやってきたことを試すこと」だった。前者はクリアしたが、後者は「50点くらいの内容」とか。攻撃で、こういう場面になれば、こういう技を使いたい、と新たな攻撃パターンを試したいと思っていながら、結局、「今までの自分の技を使ってしまった。(新しい技を)試合で試したかった」との思いが残ったようだ。
米国では、大学で実施されているカレッジスタイルの練習が中心。フリースタイルとはルールがやや違い練習方法も違うが、「20年もやっているので体に染みついている」と、忘れることはない。それでも、この1ヶ月ほどは、OBらが練習している「ニタニーライオン・レスリング・クラブ」でフリースタイルの練習に専念してきた。
97kg級世界王者のカイル・スナイダーや79・74kg級で世界を4度制しているカイル・デイクら米国を代表する選手がいて最高レベルの練習環境。ここで練習していることの自信は「大きい」と言う。
さらに、小野の日本での試合に際して、コーチ(コーディー・サンダーソン=大学の監督の兄)のみならず、ふだんの練習パートナー(ジョーダン・カナウェイ)と夫人も来日してくれ、勝たせるために献身してくれたことはうれしい限り。人にも恵まれ、「最高の環境で練習できている」と言う。
このあとは、すぐに米国へ戻り、8月22日にクリーブランドで行われるプロ・イベント「RAF(リアル・アメリカン・フリースタイル)・12」に日本選手として初出場する。昨夏から始まったイベントで、一度見たことがあるが、盛り上がりがすごく、「出場するだけでプライドを感じるような大会。リアル・アメリカン、の大会ですね」と言う。自分のレスリングは研究されているだろうから、「それを上回るだけの技の質を高めていきたい」と、しっかり準備を積んで挑む予定だ。
そのあとは、来春の全米大学(NCAA)選手権へ向けての大学の活動が再開されるので、カレッジスタイルの練習が中心になる。12月の全日本選手権にも参加予定。大学のシーズン中の参加となるので、今回以上にスタイルの違いとの闘いがあるが、「レスリングが好きでやっている。スタイルの違いは関係ない」ときっぱり。
階級はオリンピックにつながる57kg級か65kg級だが、「中途半端な気持ちで、樋口黎選手や清岡幸大郎選手に挑戦するのは、自分の信念じゃない。挑むからには真剣につくり上げたい」と話し、今の“地元”である米国でのオリンピック出場に向けても全力を尽くす。
65kg級で挑むことになっても、樋口黎とはRAFなどのワンマッチで闘ってみたいと言う。「ボク達が闘うことが、絶対に日本のレスリング界のためになると思うんです」と話し、強豪選手との闘いに闘志燃やしていた。