2026.06.20NEW

《新刊紹介》「外桜田門にたたずんで」(著:横山茂嘉=岡山・おかやま山陽高レスリング部部長)

 岡山・おかやま山陽高レスリング部の横山茂嘉部長が、高校体育教師の視点で、織田信長の野望から明治維新に至る侍たちの生き様と死生観を描いた壮絶な歴史小説を執筆。電子書籍で出版しました。

 外桜田門に立って激動する時代の変化を見つめ、中岡慎太郎をはじめとする忘れられた維新の立役者や英雄たちの死生観を体育教師の切り口で読み解き、激動する時代の変化を見つめた作品。侍たちの生き様と日本の行方を描いた、壮絶な歴史ロマン。

 同部長は、陸上競技でインターハイ出場を経て日体大からレスリングをスタート。一年次に不慮の事故で負傷し、実質1年半のマット練習で全日本選手権4位に入賞した実績。キッズ・レスリング全盛の現在でも、「高校から始めても全国大会で活躍できる」と強調する。44年間、無遅刻無欠席を貫いた熱血教師。

《電子書籍の注文》

《関連記事》
■2025年7月17日:【特集】9割強の部員が高校からレスリングをスタート!…中国高校大会を制した岡山・おかやま山陽高校
■2023年3月4日:【特集】70周年を迎えた岡山県協会、行動力抜群の横山茂嘉・新理事長(おかやま山陽高部長)が飛躍を目指す


本文より

 ふと、思う。もし、応仁の乱の頃、京都に住んでいたら、嵐山の奥へ逃げ延び、ただ震えていただろうか。もし、ほんの三十三年、早く生まれていたら、先の大戦の波にのまれ、今も異国の海に眠っているのではないか。

 でも、今、ここに生きている。 ただ運が良かったというだけで。
 「私はどう生きればいいのか」
 その問いが、ずっと喉元に突き刺さったままだ。

 二〇二四年、四月二十九日。私は皇居の南、外桜田門に立っていた。百六十余年前、ここで、大老・井伊直弼が襲撃された。目の前には治安の象徴、警視庁がそびえ建つ。ここは歴史の交差点。

 すると突然、激しい地鳴りが響き、目の前が白銀の世界へと変貌した。刺客たちの怒号。籠から引きずり出される大老。真っ白な雪が、またたく間に朱に染まっていく。

 その瞬間、稲妻が走った。「なぜ、ここに至る」。私は、戦国から維新、そして近代国家へ。複雑に絡み合った歴史の断片を、一本の線につなぎたいと思った。


目次

第一章  レスリング遠征から歴史の転換点へ
第二章  尾張の若武者
第三章  金ヶ崎の死線と不滅の法灯
第四章  信長包囲網 家康の教訓
第五章  逆転の鞆(とも)の浦 室町の足跡
第六章  信長の隆盛と本能寺の変へ
第七章  山崎の戦いから清洲会議
第八章  戦国の美女と秀吉の台頭
第九章  豊臣の双璧
第十章  太閤の没落
第十一章 関ヶ原「王者の呼吸」
第十二章 家康の拳
第十三章 なぜ「大坂夏の陣」
第十四章 浅井(あざい)三姉妹と幕府の法度
第十五章 江戸幕府の動乱
第十六章 ペリー来航と徳川の斜陽
第十七章 開国の衝撃、揺れる日本
第十八章 桜田門外の変
第十九章 長州の臥薪嘗胆と薩長の胎動
第二十章 功山寺挙兵
第二十一章 薩長同盟と動乱の予兆
第二十二章 大政奉還と王政復古
第二十三章 鳥羽伏見の戦い
第二十四章 戊辰戦争
第二十五章 義に殉じ、未来を紡いだ者たち
第二十六章 明治の光、不平士族の影
第二十七章 維新三傑の最期
第二十八章 言論の夜明け
終 章   祈り

あとがき=抜粋

 本書を締めくくるにあたり、モスクワ五輪ボイコットの「王者の呼吸」と並び、もう一つ、私の人生の大きな転換点となった「運命の伝承」について触れたいと思います。

 それは大学三年生の春。右膝の怪我という長いトンネルの中で、出口を探し、苦しみにあえいでいた時期に出会った「古代五種競技」でした。

 私は、その競技種目を目にした瞬間、言葉を失いました。
 「短距離走、幅跳び、やり投げ、円盤投げ、レスリング」。
 驚くべきことに、それは私が中学時代から順を追って心血を注いできたスポーツそのものだったのです。

 私の人生は、かつて人類が生き抜くために必要とした能力を競う、そのために用意されていたのか。この奇跡的な一致を知ったとき、眠っていた本能が激しく突き動かされました。「大学から格闘技を始めた私が、この膝で勝つことは無理かもしれない。けれど、五番目の運命がレスリングならば、せめて自分自身とのレスリングにだけは、負けるわけにはいかない」。そう覚悟が決まった瞬間、私は再びマットへ向かう原動力を得たのです。