2026.06.14NEW

【特集】ラグビーからレスリングへ里帰りした高塚飛雄馬さん、2代続いて「吹田の高塚3兄弟」の名が鳴り響くか

 昭和40年代のスポーツ根性マンガ(ドラマ)全盛期に少年少女時代をすごした人なら、「星飛雄馬」という名前を知らない人はいないだろう。昭和を代表するスポ根野球マンガ「巨人の星」の主人公の名前だ。

 野球少年であり巨人ファンだった父・純次さんの「野球のスターになってほしい」という願いで名付けられた高塚飛雄馬さんは、野球とは無縁の少年時代をすごし、キッズ・レスリングの雄、大阪・吹田市民レスリング教室で3度の全国優勝を遂げるなど活躍した。

 ケガのため中学いっぱいでレスリングを断念。高校はラグビーに打ち込んだ。社会人になり、親になって“生まれ故郷”の吹田市民教室へ里帰り。現在は4人の男の子のうち、3人がレスリングに打ち込み、母・ちよさんも子供たちと練習に励むレスリング一家だ。

 6月7日に吹田市・北千里市民体育館で行われた第45回押立杯吹田市民少年少女選手権では、三男・将大(しょうだい)が6年生45kg級で決勝進出を果たした。準決勝で負傷し、7月末の全国少年少女選手権へ向けて無理せず決勝を棄権。銀メダルに終わったが、一昨年、昨年と3位に終わっていた全国大会の最後の年に初優勝を達成すべく、気持ちは前に向いている。

▲吹田市民教室の今川加津雄代表(左)の見つめる中、準決勝で闘う高塚将大

常に『一番を目指す』という気持ちを…高塚飛雄馬さん

 セコンドで熱の入った声援を送っていた高塚さんは、将大の準決勝までの闘いぶりを「伸びているところもありましたが、まだ課題の残る部分もありました」と振り返る。全国大会までの約1ヶ月半、ケガを治すとともに、課題の克服に全力を尽くす腹積もりだ。

 レスリングに親しむ3人の子供に求める目標を聞くと、「自分の成績以上のところまで行ってほしいと思っています。だれかが、一度でいいから全国チャンピオンになってほしいですね」と、やや控えめな答え。「オリンピックは?」との問いに、「そこまで行ってくれれば、ありがたいですけど、そんなに甘い世界ではない」と笑いながら、「それを目指してやらなければ、意味がないところもあります。常に『一番を目指す』という気持ちを持ってやってほしいです」と力をこめた。

▲試合のインターバルで将大を迎え入れる高塚飛雄馬さん

 自身もレスリング一家で育った。兄弟の中で最初にレスリングから離れたが、次弟・高塚慎吾は大阪・吹田高時代に全国高校選抜選手権で優勝し、日大では団体戦のレギュラーとして2000年の東日本学生リーグ戦2位を支えた。現在は吹田市民教室のコーチ。

 末弟・高塚紀行全国少年少女選手権7回優勝を筆頭に、あらゆる世代での優勝を経験。2006年世界選手権で銅メダルを獲得。2008年北京オリンピックは、アジア予選決勝まで進み、ラスト数秒で逆転負け。タッチの差で代表を逃した。現在は、勤務先の自衛隊と連携している神奈川・横浜修悠館高校の監督。2人がレスリングに打ち込むようになったのは、長兄の影響であることは言うまでもない。

▲1988年全国少年選手権(新潟市)で兄弟W優勝を達成した高塚飛雄馬さん(中央)と慎吾さん。後列中央は吹田市民教室の押立吉男代表、右は母・高塚小百合さん(末弟・紀行は3歳で出場していない)

自分の頑張りが自分に戻ってくるレスリング

 飛雄馬さんがラグビーを経てレスリングに戻ってきたのは、「やはりレスリングに未練があったからですかね…」と振り返る。ケガでレスリングができなかったというより「気持ちが折れてしまった面もあります」とのこと。その後悔も今のエネルギーなのかもしれない。

 「自分の頑張りが自分に戻ってくる。そこに魅力があります」と、個人競技の特性を強調。子供にはラグビーではなくレスリングを勧め、自身も吹田市民教室にコーチとして参加している。

 無理強いはしておらず、次男はレスリングをやっていない。しかし、長男・旺介(2024年全国中学生選手権3位)は現在、大阪・大体大浪商高でレスリングに打ち込み、三男の将大(前述)と四男の瑛大(小3)は吹田市民教室で週5回の練習に参加。3人がマットで汗を流す姿を見て、かつての自分の姿をだぶらせているのではないか。

▲6月8日の三恵海運レスリング班の大体大への“出張練習”。吉田アラシの指導を受ける高塚旺介=撮影・布施鋼治

 「レスリングをやっていることで、親子の共通の話題ができます。勝ったときのご褒美を目指して頑張ってくれますし、親子のいい関係ができます」と言う。一方、ある程度の負荷をかけなければ勝てる選手にはならないので、ときに厳しくなり、「行き過ぎだったかな?」と感じることもあるそうだ。

 その場合は「そのあと、しっかり話し合ってフォローするように心がけています」とのことで、これも親子のコミュニケーション。いずれにせよ、親子で共通の目標を目指すことのメリットがあるようだ。

来年1月には、母親が全日本マスタース選手権デビューか?

 前進のための後退で決勝を棄権した将大は、「全国大会がありますから」と無念そうな表情の中にも、割り切った気持ちもある様子。1回戦はよかったが、続く準決勝は途中で足が止まってしまい、「動きが悪かった」と反省。これが負傷につながったようだ。

 レスリングは4歳のときから始め、兄が続けていることもあって、現在まで続いている。吹田市民教室での週5回の練習のほか、1回は育英クラブ(兵庫=藤本健太監督)などに出げいこし、強さを求めている。将来の具体的な目標はまだ見えていないようだが、「中学へ行っても続けたい」と言う。

▲小学生最後の夏に全国優勝を目指す高塚将大(左端)

 母・ちよさんは、飛雄馬さんとは職場結婚で、レスリングとは無縁だった。「ケガしないかと冷や冷やで、最初はやらせたくなかったんですよ」と笑う。子供が熱を入れることではまり、キッズ審判員の資格を取得。マットに上がってキッズ選手とスパーリングをやるまでになった。

 飛雄馬さんが厳しい父親かどうかの問いには、笑って答えをにごしたが、「子供たちは楽しくレスリングをやっているようなので、それが一番じゃないですか。やはり全国チャンピオンにまでは行ってほしいですね」と期待した。

 そこへ、大会に同じスタッフとして参加していた全日本マスターズ選手権出場の常連、長尾由香里さんが通りがかり、「来年の全日本マスターズ選手権に誘います」と一言。ちよさんは否定はしなかったので、来年1月には母親の全国デビューが実現し、レスリング一家の新たな闘いがスタートしそうだ。

▲母も選手デビューし、新たなスタートを切るか、高塚一家