(文=布施鋼治)
「一番は勝つこと。二番目は、今まで自分がやってきたことを出すこと。具体的にいうと、組み手をメインに、ポイントメイクを考えながら点数をとれたらいいと考えながら闘っていました」
2026年明治杯全日本選抜選手権。男子フリースタイル97kg級は吉田アラシ(三恵海運)が3試合連続のテクニカルスペリオリティ勝ち。加えて無失点という圧倒的な強さを見せつけ優勝した。今春大学を卒業し社会人になったばかりだが、その自覚はしっかりと芽生えていた。
「大学生のときと違って、(所属する企業の)社員の方々に応援に来てもらっていた。日ごろサポートしてもらっているおかげで勝てたというのもありました」
決勝は、予想通り日大での練習で毎日のように胸を合わせているリボウィッツ和青(日大)との対戦となったが、想定していたのとは異なる戦法をとってきたと明かす。
「組み手になったら内側を取ってくると思っていたけど、そんな感じもなかった。和青君なりに、いろいろ考えていることは伝わってきました」
一見完全優勝に見えるが、その中で自らの課題を見つけることも忘れない。
「最近は組み手をやっている中で右を使うことが多かったので、左手も増やそうと思った。試合になったら頭が真っ白になったというか、以前からやっている右の組み手が出たという感じがしました。練習では左手による組み手もやっていたけど、その前のバージョンが出たという感じでした」
右手だけではなく、無意識のうちに左手も自由自在に使いこなす組み手が理想だが、そううまくいかないのも現実。
「試合開始のホイッスルが鳴るまで意識していたけど、相手も止まっているわけではなく動いている。その中でやっぱり使いやすい右手を使っていた感じです」
世界に向け、アラシは利き腕の右だけに頼らないバランスのいい組み手を追い求めている。「これからアジア大会、世界選手権と続くので、今まで以上に集中してやっていきたい」
今大会には兄の吉田ケイワン(三恵海運=男子フリースタイル125kg級)と弟の吉田アリヤ(日大=男子フリースタイル79kg級・男子グレコローマン77kg級)も出場した。アリヤは両スタイルに出場し、ともに3位決定戦へ進出(フリースタイルのみ勝利)。
「ケイワンはケガで負け、アリヤも惜しい結果になりました。僕も兄弟の応援になったら興奮して、のどがカラカラになりました(苦笑)。でも、自分の試合になったら、しっかりと気持ちを切り換えて闘うことができました」
とりわけアラシと同じ日大に進学したアリヤに対しては、もっと強くなってほしいと思っているだろう。「かわいい弟は千尋(せんじん)の谷に突き落とせ」とばかりに、大学での練習では弟への当たりがかなり厳しい。
アラシだけではなく、吉田兄弟で快進撃を始める日も近いのではないか。