「○年ぶりの~」という快挙が続く慶大(慶應義塾高)で、またも長年の空白を埋める快挙が達成された。2026年U23全日本選手権の男子フリースタイル97kg級で、佐藤秀一郎が優勝。1966年シニア選手権・グレコローマン+97kg級の代表となった丸山充信(現・岐阜県協会会長)以来、60年ぶりの“世界選手権代表”を決めた。
《慶大・慶應義塾高の最近の台頭》
■2019年=大山泰吾が慶大選手として45年ぶりに全日本選手権出場
■2021年=尾﨑野乃香が慶大選手として55年ぶりの世界選手権出場、銅メダル獲得
■ 同 =尾﨑野乃香が慶大選手として62年ぶりの全日本選手権優勝
■2022年=岡澤ナツラ、瀧澤勇仁が慶應義塾高選手として初のU17アジア選手権出場、瀧澤が銅メダル獲得
■ 同 =尾﨑野乃香が慶大選手として初の世界選手権優勝
■2023年=岡澤ナツラが慶應義塾高選手として初のU17世界選手権出場
■2024年=慶應義塾高が関東大会団体優勝、インターハイ学校対抗戦に出場
■ 同 =岡澤ナツラが慶應義塾高選手として64年ぶりにインターハイ優勝
■ 同 =尾﨑野乃香が慶大選手として72年ぶりのオリンピック出場、銅メダル獲得
■ 同 =瀧澤勇仁が慶應義塾高選手として64年ぶりの国民スポーツ大会優勝
■2025年=岡澤ナツラが慶大の男子選手として54年ぶりに全日本学生選手権の決勝進出
■2026年=淺野稔理が慶大の選手として41年ぶりに東日本学生連盟・学生委員長へ
佐藤は、試合が終わってしばらく時間がたっているにもかかわらず、「小学校からレスリングを続けてきて、初めての全国大会での優勝なんです。素直にうれしいです」と興奮さめやらぬ表情で話した。昨年の全日本ビーチ選手権で優勝していることを指摘されると、「マットの上でのレスリングでは、初の優勝なんです」と苦笑いしながら“訂正”した。
中学時代は全国中学選抜選手権3位が最高。千葉・八千代松陰高時代に県予選で優勝したことはあるが全国で上位の成績は残せず、慶大進学後も東日本学生新人戦や同選手権の2位どまり。「優勝」はなかったと言う。
決勝の相手の中西広耀(中大)とは、1年生のとき(2024年)の東日本学生春季新人戦で対戦しており、第1ピリオド、0-5からフォール負けしていた相手。優勝するにはリベンジしなければならないと、その試合の動画をしっかりと見返して研究。「対策がしっかりできました」とにっこり。
中西は昨年の国民スポーツ大会で3位に入るなど、力を落としているわけではない。その選手に勝ったことに、自身の成長を感じるようで、「小島豪臣コーチの指導でトレーニングメニューも変え、パワーアップできたのかな、と思います」と言う。
後輩からの突き上げもある。昨年春、インターハイ王者の岡澤ナツラ、国民スポーツ大会王者の瀧澤勇仁の強豪2選手が入部。その強さに舌を巻き、「リーグ戦で勝つには2人だけではダメだ。自分も勝たなければならない、という気持ちが芽生えました」と振り返る。それが実力アップにつながったことは言うまでもない。
この優勝で10月のU23世界選手権へ出場することになる。ビーチのワールドシリーズを別にすると初の国際大会。「楽しみという気持ちもありますが…」と話す一方、負けられないという気持ちも。この階級の全日本王者の吉田アラシ(現三恵海運)は同じ千葉県出身の1年先輩。「アラシさんがつくった『日本の重量級は強い』というイメージを崩さないように頑張りたい」と気を引き締めた。
シニアの全日本で台頭するには、その吉田アラシが壁となる。小学校の頃から何度も闘っており、一番最近は昨年のこの大会。テクニカルスペリオリティで負け、「全然歯が立たなかった」と言う。1年遅れで同じU23全日本王者になり、次に闘うときは“U23全日本王者同士の対決”となるが、「胸を借りる立場。思い切って闘いたい」と言う。「闘う以上は、勝つ、という気持ちですよね」との問いに、力強く「はい!」と答えた。
慶大の最上級生(副主将)として、リーグ戦での一部復帰も課題のひとつ。昨年は二部リーグで優勝したものの、神奈川大との入替え戦で敗れていた。この4月からJOCジュニアオリンピックカップU20-61kg級3位の菅原大志が慶應義塾高から入部し、団体戦での厚みが増す。「一部昇格という目標を明確に持ち、勝つ、という気持ちを全員で共有し、頑張りたい」と、個人、団体の双方での健闘を誓った。