2025年6月26日の日本レスリング協会・理事会のあとに行われた記者会見での木村晃一顧問弁護士(役員候補者選考委員長)の理事・役員選任に関する説明と、その後の同弁護士、多賀恒雄専務理事らと報道陣の一問一答は下記の通り(予算・決算・監事の部分は割愛します、関連記事)。
木村弁護士 スポーツ団体のガバナンスコードの中央競技団体向けで、理事について「就任時において70歳を超えてはならない」「在籍10年を超えてはならない」という規定があります。今回、ガバナンスコードに抵触する理事が3名います。その点につきまして、役員候補者選考委員会が、なぜそうした方々を理事候補に載せたか、という部分を説明します。
ガバナンスコードの中に、激変緩和措置(急激な変動による混乱を避けるための猶予=2024年まで)が終わった今でも、例外規定が若干設けられています。国際大会における競技力向上等において、「該当理事の存在が不可欠である」という場合や、「IF(国際競技連盟)の役員をしている」とかの場合、その例外規定を適用しています。これを踏まえまして、レスリング協会の内規にも「70歳を超える部分と、在籍10年を超える部分については理事として選任しない」という原則がありますが、例外規定も設けられています。
役員候補者委員会、それから事務局や専門委員会を通じて、どのような方を理事にするのがふさわしいか、各種ヒヤリングさせていただきました。そのうえで、当該3名の方は、例えば国際競技連盟、IFではありませんがアジア・レスリング連盟の名誉副会長であったり、UWWの関係で世界とのつながりを持っているなど「余人をもって代えがたい」という意見があり、当協会において協賛企業の獲得という面において、個人的なつながりを持っていて、財務面での中長期計画の達成へ向けて、その方を中心に今まで動いてきて、今後においてもそういった活躍をやっていただく必要がある、という声が多くありました。
また、実務面、運用面で中長期計画を策定した段階から中心的な役割をこなしてきたなど、中長期計画を遂行していくうえで、その方の存在が欠かせない、という方がいらっしゃいましたので、3名については例外的に役員候補者名簿に記載させていただく運びになりました。
ただし、中長期計画を遂行と言いましても、激変緩和措置が終了しまして、いつまでも世代交代ができないようでは…。ガバナンスコードが策定された趣旨としては、世代交代、新陳代謝をはかることです。ガバナンスコードを原則として重視する、できない場合は説明責任を果たすというのがガバナンスコードの役割となります。役員候補者選考委員会では、理事会に向けてその提言をさせていただいています。
いろんな意見を聴取する中で、その人達でなければできないという話があり、協会の運営上、その人達を選任する意見が多かったのですが、すでに激変緩和措置が終わった中で、世代交代ができない、次の改選期でもできない、というのは難しい(通らない)。役員候補者選考委員会としては、今回に限り例外としてそうした方々を名簿に載せることを判断するが、次に向けて後進の育成であったり、次の理事の育成を必ず促進してください、ということは6月9日に開催された理事会においても、伝えさせていただきました。
そのうえで、9日の理事会で評議員会に提出を確認し、本日の評議員会でも説明させていただき、理事案の全員を選任することになりました。
多賀専務理事 今、説明ありましたことは、本日の評議員会にて承認されました。続いて行われた新理事による理事会の互選で、新役員を選任しました。
(以下、質疑応答。質問者無記名は本サイト編集長・樋口郁夫)
--役員候補者選考委員会のメンバーを明らかにして下さい。
木村弁護士 規定に基づいて理事会で選任されています。まず、私が弁護士の資格として外部有識者として入らせていただいています。社会人経験・企業経験として、他のNF(国内競技団体)にも関与されている藤原英則さん、富士通の方です。帝京平成大学の医師でもある増島篤さん。元重量挙げの選手で浅田久美さん、理事にも入っていただいています。最後に実務的な部分を含めて日本レスリング協会の高橋正仁事務局長で、以上5名です。
--先ほどの説明の中で、例外規定の3人について「今回限り例外として」との説明がありました。ということは、2年後の改選のときには終わり、という意味でしょうか。
木村弁護士 役員候補者選考委員会での話としては、そういう話が出ました。
--決定、ではないんですね。2年後の改選のときに、また例外として続く可能性もある、ということですか?
木村弁護士 役員候補者選考委員会に我々が再任するかどうかは分かりません。今のメンバーの提言としては、ガバナンスコードとの兼ね合いで、きちんと後進を育てて下さい、次の理事をになえる人材を育てて下さい、という提言をさせていただきました。そのうえで、基本的には今回限り、と思っています。ただし、次の役員候補者選考委員会でどのような議論がされるか、その意思決定過程を含め、次の役員候補者選考委員会が今の役員候補者選考委員会に拘束されることはないと思っています。提言を理事会の議事録に残してはいます。
--その選考委員会のメンバーは、なぜ事前に明らかにされないのでしょうか? 密室の中で会長が決まっているのが現状ではないですか?
木村弁護士 選考委員会のメンバーに関しては、理事会で承認を得ていますので、特段、それを隠している、密室でやっている、ということはないと思います。ただ、おっしゃる通り、公表があったか、となると、ありませんでした。
--それは、公益財団法人として、おかしくはないですか?
木村弁護士 意思決定過程のすべてを公表しなければならない、ということはないです。ディスクローズ(非公表)をどこまでやるかは各NFの裁量であり、基本的に理事や評議員の役職者の公表は、公益財団法人として当然、公表しています。では、各委員のメンバー全員の公表義務まであるか、となると、それはないと思います。おっしゃる通り、透明性、風通しという点で、だれがどう選んでいるかという意思形成過程、その流れについて公表があってもいいと思います。
--次は、ぜひとも事前に公表していただきたいと思います。あと、例外規定があることは理解していますが、3人とも理事の在籍20年を超えています。規定の倍以上の理事が3人もいるのは、選考委員長として、おかしいとは思わないでしょうか?
木村弁護士 12年ならよくて、20年、30年なら駄目、という問題ではないと思います。例外規定を適用するというのは、余人に代えがたいから適用している、それだけの活躍していただく必要がある、という趣旨です。その例外をいつまで認めるかは、別問題だと思います。役員候補者選考委員会でもその話となりました。激変緩和措置が終わったのが令和6年度(2024年度)で、そこまでは在籍が10年でも、20年でも問題はなかったわけです。
今回は変わって最初の年。我々はいろんな人の話を聞いて、その人達が余人に代えがたい存在であり、必要だ、という意見を聞き、今回、例外規定のもとで候補者リストに載せさせてもらいました。20年だから駄目、15年ならいい、という考慮はしていません。必要かどうか、という観点で選考しています。ただし、新陳代謝を促進するための規定がある中で、長すぎる、というのは、当然ごもっともな意見だと思います。協会として考えなければならない部分だと思いますので、先ほど言った提言を理事会にさせていただきました。
--3人の「余人に代えがたい」という理由を、ひとり一人について説明してください。
木村弁護士 理事会では説明させていただきました。どなたか、どう、ということにつきましては、個人を特定することなく、ある程度特定されているのかもしれませんが(注=本サイトでは掲載しています)、アジア連盟の名誉副会長であったり(注=富山英明会長のこと)、国際大会やUWWとの兼ね合いで日本レスリングを代表する顔であるという理由(注=富山英明会長のことと思われる)、スポンサーとの関係で財務面で長く活躍され(注=土方政和副会長のことと思われる)、スポンサーとの関係性ということを含めて次世代に承継して循環していかなければいけないと思いますが、現段階で個人的なつながりがあります。
もう一人は、中長期計画の作成時から協会の総務や運営面の全般に関与していただき(注=多賀恒雄専務理事のことと思われる)、現体制の中でそういった面でのサポートや運営執行のノウハウの蓄積があり、他の人では代えがたいと判断し、その内容を理事会でも説明させていただきました。
--具体的な名前を挙げて説明はできないのでしょうか?
木村弁護士 役員候補者選考委員会で、意思形成過程が公表され、だれがどう発言したか、どの人に対してどういう評価をしたか、まで発表されると、自由な意見交換が阻害される可能性を危惧しています。まあ、今はある程度分かるように発言しましたが…。
--名前をはっきり言わなければ、理事に正しく伝わらないではないですか。
木村弁護士 理事会では氏名を伝えています。この方は何年目ということも含めて話しています。