大きな壁を超えた-。2022年に中学二冠(全国中学生選手権、全国中学選抜U15選手権)を制したリボウィッツ和青(東京・自由ヶ丘学園高)が、男子フリースタイルU20-97kg級決勝で、昨年優勝で全日本大学選手権で1年生王者に輝いた2歳上の甫木元起(日体大)を5-2で撃破。大きな飛躍を遂げた。
リボウィッツは「やっと勝てました…。気持ちいいです」と、しみじみ話し始めた。超中学級の重量級選手として注目されて高校へ進み、最初の大会となった2023年のこの大会の決勝で、前年の高校三冠王者の甫木(当時佐賀・鳥栖工高)に3分14秒、4-14のテクニカルスペリオリティで黒星。同年のインターハイでは4分27秒、2-12で、国体(現国民スポーツ大会)では2分41秒、0-12で、やはりフルタイム闘うことのない敗北。取ったポイントが4点、2点、0点と少なくなっており、実力を縮めるどころか、スコア的には離されてしまっていた。
最初の黒星のときは「こんなにうまくいかないことがあるものなのか。鬼になって練習しなければ超えられないと思った」と振り返る。それから「毎日、意識がとぶくらい練習した」とのことだが、それでも勝利が遠のき、「絶望的な気持ちにもなりかけた」と言う。
ただ、落ち込むのはその日だけ。「1日で気持ちを切り替え、次の日から練習に打ち込みました」と、負けを引きずることなく前を向いた。攻撃では組み手からタックル、防御ではタックル切りの練習に力を入れてきた。久しぶりの対戦となった今回の一戦では、「その練習の成果が出ました」と言う。
1-0とリードした後の4点は、場外際に追い込まれ、タックル返しで奪ったポイント。返しがうまく決まらず逆に4点を取られていたら、勝敗が逆になった可能性もある。だが、このタックル返しも、そういう状況になったときのために練習していたそうで、決して苦し紛れの返しが偶然に決まったものではない。
ここで5点差になり(残り時間2分27秒)、あとは無謀な攻撃を控え、失点しないよう流す闘いもあるだろうが、「テクる(テクニカルスペリオリティ)ことを狙っていました」と攻撃精神はひるまない。というより、甫木を相手に流す試合ができるはずもなく、必死に攻撃することで甫木の反撃をしのいだ、という表現の方が正しいだろう。結果として追加ポイントは取れず、逆に2点を失った。技を仕掛けてのポイントはなく、「取り組まなければならないことは、たくさんあります」という言葉は当然か。
米国人の父と日本人の母の間に米国で生まれ、4歳のときから日本に居住。柔道とレスリング(警視庁第六機動隊少年部)に親しみ、ともに台頭。2022年にレスリングで中学二冠王者に輝き、一気に注目を集めた(関連記事)。
この1勝で甫木との実力差が逆転したわけではないが、どんな形であれ、目標であり大きな壁を乗り越えたことは自信になる。「小さな一歩ですが…」と、その点は満足そう。6月には明治杯全日本選抜選手権に出場し、昨年12月の全日本選手権(92kg級)で2戦2敗(2試合で1点も取れず)だった雪辱を目指し、シニアの世界選手権出場も目指す。
高校の大会も続き(都大会、関東大会、インターハイ)、8月中旬にはU20世界選手権もあるのでハードな日程になるが、若さには、それを乗り越える力があるはず。「3年後までには吉田アラシさん(日大)を破ってロサンゼルス・オリンピックに出るのが目標です」ときっぱり
吉田の活躍で期待が出ている日本の重量級に、力強い戦力が出てきた。甫木も巻き返しも期待され、若い力による熱い闘いが期待される。