スポーツ言語学会(黒田勇会長=関大名誉教授)は3月8日、都内で開催した学会で、今年度に創設した「スポーツ言語大賞」に、レスリング女子76kg級の鏡優翔選手(サントリー)の「ガンバレと言われるより、カワイイと言われる方が力になる」(関連記事)を選出し、発表した。
日本発のアニメで“世界語”になっている「カワイイ」に、新たな意味を与えた鏡選手のコメントが「最もふさわしいと判断した」が選出理由。
「鏡選手は小学生のころから体が大きくて強いことから『バケモノ』扱いされてきたそうですが、資質を見出されたレスリングで実力を発揮。パリ五輪では『カワイイ』と刻まれたマウスピースを装着し、髪をフランス国旗の三色に染めてリングに上がって見事に女子最重量級の金メダルを獲得しました。日本発のアニメなどで『世界語』になっている『カワイイ』へ新たな息吹を注ぎ込んだ功績を高く評価します」としている。
発表の席上で黒田会長は、従来の「カワイイ」という言葉のイメージには「小ささ」があり、力強さとは無縁であることを指摘。AI辞書でも「小さいもの、弱いものなどに心引かれる気持ちをいだくさま」「いかにも幼く、邪気のないようす」「すれてなく、子供っぽい」などがある。
鏡選手はこうした固定観念を打破し、力強くて頑張る姿も「カワイイ」と表現。世の中の価値観が多様化する中、「言葉の持つ意味が変化する過渡期に最もふさわしい言葉」と説明した。
■鏡優翔選手の話「この度、スポーツ言語大賞に選んでいただき、ありがとうございます。素敵な賞をいただけること、とても光栄です!
私は、昔から強くなるために鍛えていたので、バケモノ扱いをされることが多かったです。でも、スポーツを頑張る私たちも『カワイイ』でいいのではないか、一般的に言われるカワイイ女性に当てはめる必要がないのではないかと思い、『カワイイ』という言葉を使うようになりました。少しでも私が使っている意味を知ってもらえたらうれしいです」
【スポーツ言語学会】スポーツに総称される身体運動と、言語に集約された言葉との間に橋を架け、互いの資質向上を図りながら文化の発展に寄与することを目的に2014年に発足。スポーツにおける言語の役割や、そのあり方を研究している。理事には、共同通信でレスリング取材を担当した船原勝英記者らが名を連ねている。