※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
2月5日、栃木・FUKAI SQUARE GARDEN足利(足利市民体育館)で開催された「2022年度正田杯関東高校選抜大会」の最終日。個人戦では花咲徳栄(埼玉)が3階級を制した。
中でも昨年のJOCジュニアオリンピックカップU17・55㎏級優勝の大脊戸逞斗(おおせど・たくと)は、男子55㎏級準々決勝で昨年の全日本選手権・男子グレコローマン55㎏級を制している金澤孝羽(東京・自由ヶ丘学園)をフォールで破る殊勲を挙げ、その勢いで優勝を果たした。
「金澤選手はしっかり返してきたり、投げてきたりする選手だけど、片足タックルを取ったあと、ちゃんと処理をして取り切れたことがよかった。自信につながりました」
決勝は地元の与那城一輝(栃木・足利大附)との一戦となり、一時はフォールされそうになるなど苦戦したが、10-4で振り切った。
大脊戸は試合内容に不満を漏らした。「与那城選手とは過去に一度闘い、テクニカルフォールで勝っている。今回はテクる(テクニカルフォール勝ち)ことができなかったので、次回はまたそうしたい」
昨年のU17世界選手権(イタリア)では5位だった。大脊戸は「今年は(U20の)世界選手権でメダルを狙いたい」と意気込む。「海外の選手は、こちらが片足を取っても、日本とは違って耐えてくる選手が多い。U17では、そこからうまく取り切れず、グラウンドでも返し切れなかった。重点的に練習しています」
男子65㎏級は仁木武流(にき・たける)が制した。中でも鈴木飛来(山梨・韮崎工)との3回戦(準々決勝)は、19-14という大量ポイントを奪い合うレスリングでは珍しいスコアで薄氷の勝利。死闘と呼ぶにふさわしい一戦だった。
「一時は8点差をつけられ、あと2点取られたらテクニカルフォール負けになっていた。そこから何とか踏ん張り、自分の持ち味をいかして勝てたと思います」(仁木)
仁木の持ち味とは、「最後まで構えを崩さず、ぶれない構えで相手を詰め、自分の形で闘うこと」を指す。「花咲徳栄は、きついところから踏ん張るという肉体とともに精神を鍛える練習が多い。だからこそ、今回も最初にポイントを取られても、めげずに、後半取りにとりにいくことができました」
125㎏級は藤田宝星(ふじた・ほうせい)が頂きを極めた。通常体重は98㎏。この階級では決して大きい方ではない。決勝を争った中沢遥貴(山梨・甲府城西)とは、相当な体重差があると思われるが、そのハンディを感じさせることはなかった。
逆に場外際で2度も吹っ飛ばし、4点ずつ奪うなどパワーの差を見せつけた。なぜ、藤田は体格差を感じさせない闘いができたのか?
「相手が重い分、動きでカバーしようと思っていました。この階級の中では動ける方だと思っています」
自分の持ち味は?
「組み手と足のステップで相手を崩し、タックルに入る戦法だと思います」
出げいこで日大に足を運び、重量級の大学生と何度も肌を合わせていることもプラスに働いた。「大学生とやったら、やられてしまう部分もあるけど、しっかりとついていけるところもある。僕は大学生にやられて強くなっていったんだと思います。今日も、大学生とやることを考えたら問題なかったですね」
花咲徳栄は、学校対抗戦では3位に終わったが、そのまま失意に沈むことはなかった。逆に、その結果が学校対抗戦終了のあと、すぐスタートした個人戦に出場する選手たちの気持ちに火をつけた。
「一人ひとりが個人戦をしっかりと盛り上げ、一人が優勝したら、それを箱根駅伝のタスキのようにつなげていく。そんな気持ちで戦っていました」(大脊戸)
この3選手を軸に、3月の全国高校選抜大会でも嵐を巻き起こせるか?