レスラー列伝 伊調馨(2)

「無敵の女王の強さ光る! アクシデント乗り越え、日本女子初のオリンピック3連覇達成」

文=中村亜希子(東京スポーツ)

 前人未到のオリンピック3連覇を達成した伊調馨。ロンドン入りしてから左足首のじん帯を切るアクシデントに見舞われた。それでもV3への自信はゆらぐことがなかった。


(本文より)

 それまで、何となくかけていた技が、理由があるから決まることを知った。脚を取る手が数センチ単位で変化した。きつい朝練習も休むことなく参加。もちろん女子の合宿にも参加し練習を積んだ。八戸に帰省するたびにマットで練習する姉・千春さんは「馨はめちゃ強くなっている。技の理論も教えてもらって、私も勉強になるほど」と、妹の変化に驚いた。

 体調さえ良ければ3連覇間違いなし。誰もが確信して迎えた五輪直前、試練が女王を襲った。8月3日にロンドン入りし、翌日のマルチサポートハウスで練習中に「ブチッ」という嫌な音が鳴り響いた。左足首のじん帯の3本のうち1本半が切れたのだ。激痛が走り、歩くこともままならない。関係者に背負われて選手村に戻った。

 試合本番まで4日しかない。息上げもスパーリングもできない。自暴自棄になってもおかしくない状況だ。しかし「本人がまるでどこ吹く風で、一番どっしりしていた」(チーム関係者)