「第1回世界女子選手権の思い出」
文=布施鋼治(スポーツ・ライター)
今でこそ、日本のメディアが大挙して押しかける女子の世界選手権。しかし、1987年にノルウェーで行われた第1回世界女子選手権を取材した記者は、まだプロとは呼べなかった布施鋼治記者、ただ一人だった。世界で唯一、第1回世界女子選手権を取材した記者に、思い出を振り返ってもらった。
(本文より)
1987年10月23日、私は西ドイツ(当時)のハンブルクから夜行列車でデンマークを経由してノルウェーに向かった。行き先は首都オスロ。翌日から2日間に渡って開催される「第1回世界女子レスリング選手権」を取材するためである。
当時、私は大学を休学中の身で、同年4月からロンドンを拠点に生活していた。その数年前から「スポーツ・ライターになりたい」と思い、執筆活動をスタート。ロンドンでも現地の格闘技などの模様をリポートして専門誌に寄稿していた。
女子レスリングとの出会いは日本だった。1980年代半ば、女子プロレスを中心に扱う「デラックスプロレス」(以下デラプロ)という月刊誌があり、その中で女子レスリングについての記事を何度か書かせてもらう機会があった。
なぜプロレス雑誌にレスリング記事を書いていたのかと疑問を抱く方もいるかもしれないが、その頃、女子レスリングをやっている選手の大半は女子プロレスラー志望だったからだ。