「オリンピック選手をのべ11人育成 日本レスリング界を支えた素人監督」
文=増渕由気子(日本レスリング協会広報委員)
かつて高校レスリング界で一時代を築いた鹿児島・鹿児島商工高校(現樟南高校)。加治佐正昭監督はレスリング経験のない素人監督だ。それでいながら、のべ11人のオリンピアンを育てた。ロンドン・オリンピックで金メダルを取った米満達弘は孫弟子。その指導理論をさぐった。
(本文より)
オリンピック選手を育てる-。指導者としては最高の栄誉であり、実現したときは指導者冥利に尽きるのではないだろうか。鹿児島・鹿児島商工高校(現樟南高校)のレスリング部前監督の加治佐正昭氏は、のべ11人のオリンピック選手を育てた。
単一高校でのべ11人のオリンピック選手は、2012年現在、他競技と比較しても例を見ない大記録。オリンピックには手が届かなくとも、日本のトップを獲り、世界選手権に出場したのは平松義高、杉野浩吉、五位塚悟、勝龍三郎の4人。
この中で世界チャンピオンは2人で、1981年に朝倉利夫(フリースタイル52kg級)、1983年に江藤正基(グレコローマン57kg級)が成し遂げている。
オリンピックでは、1984年ロサンゼルス大会で江藤が銀メダルを獲得。世界選手権やアジア選手権にまで記録を広げると、雪だるま式にメダルは増える。