※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2022年全国中学選抜U15選手権の女子66kg級は、4月のジュニアクイーンズカップと6月の沼尻直杯全国中学生選手権を制した本多結里菜(東京・フィギュアフォークラブ)が2試合に快勝。今季3個目のタイトルを手にした。
「うれしいです」と第一声の本多。決勝の相手は全国中学生選手権の決勝でも闘い、第1ピリオドでテクニカルフォール勝ちしていた相手。勝つのが当然とまではいかなくとも、気持ちのうえでは有利だったと思われる。だが、大会前に左肩を痛めていて、それが少し影響したそうだ。
第1ピリオド、ややもたついてしまったのは、そのためか? だが、第2ピリオドに入ってポイントを重ね、10点差をつけて地力の違いを見せた。投げ技が得意な選手ということを知っていて、「投げが来ることを予想していた」。その状況になっても冷静に対応してポイントを与えることはなかった。
小学生時代から数多くのタイトルを手にした選手。全国少年少女選手権は2年生から5年生まで勝ち続け(6年生時はコロナで大会中止)、全国少年少女選抜選手権も4・5年を連覇(同)。ジュニアクイーンズカップのキッズの部は4度優勝している。
中学に入ってから壁があった。昨年のこの大会は吉田千沙都(三重・一志ジュニア=当時)に敗れて3位。初の国際大会となった今年7月のU15アジア選手権(バーレーン)はインドの選手に6-2とリードしていながら、日本ではあまり見かけない投げ技を受けてしまってフォール負けを喫し、銀メダルに終わった。
「いい経験でした。構えが高くても、それでも守り切れる強さとか、投げのすごさとかを学びました」と振り返り、世界の広さを知るとともに、「今後の新たなエネルギーになった」と言う。
現在中学2年生。来年もまだU15世代であり、再チャレンジする権利がある。「国内では、闘う大会すべてを第1ピリオドで勝つことを目標にし、来年こそは優勝したい」と、世界を視野に入れての新たな闘いが始まる。
父であり、フィギュアフォークラブの本多尚基代表(日大卒=全日本選抜選手権2位など)は「タックルで倒したい、という思いが強すぎますね」と振り返る。その気持ち自体は悪いことではないし、世界で勝ち抜くにはタックルがなければ厳しいのは、多くの指導者が指摘すること。
しかし、意識がそちらに行き過ぎると感じており、「もう少し試合全体の展開を考えて闘ってほしいんですよ」と、欲の深いところを見せる。相手にかける圧力が強すぎて低く構えられてしまい、かえってタックルに行けない状況にしていることを感じたそうで、相手の動きをしっかり見て、試合の流れの中で自然に出てくるタックルを目指させたいと言う。
ジュニアクイーンズカップと全国中学生選手権を含めた今年の3大会で、全試合、失点0のフォールかテクニカルフォールで勝っている。勝負の世界に「満点」はないにしても、順調な成長を見せていると言えるだろうが、「本人の目標はもっと高いところにあるようで、内容には納得していないみたいです。しっかりサポートしていきたい」と話し、国際舞台でも通用する強さを目指す。
フィギュアフォークラブでは、全日本マスターズ選手権に出場するような男子選手とも練習を重ね、パワーアップを中心とした体力づくりも試みている。世界で通じるタックルを身につけ、さらなる上の目標を見つめる。