※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
日体大が28年ぶりにグランドスラムを達成した2022年全日本大学選手権。その大会では、「31年ぶり」という記録も生まれていた。92kg級で優勝した坂井孝太朗が、明大選手として1991年以来の優勝を成し遂げ、古豪の意地を見せた。
「率直に『うれしい』という気持ちです」と第一声を発した坂井は、決勝の相手の目黒優太(国士舘大)には「苦手意識があった」と吐露した。8月の全日本学生選手権と、この大会の(ノルディック方式の)予選リーグで負けていたためだが、「その中で勝ててよかった。最初にポイントを取れたのが大きかった」と振り返った。
予選リーグでの目黒との闘いは、お互いに攻めあぐみ、アクティブタイムによるコーション・ポイントのみの1-2の黒星。坂井が第2ピリオドに2度のコーションを受けてしまっての逆転負けだった。「後半、相手の動きを見てしまい、攻めることができずに負けた」という反省から、決勝での再戦は「最初からタックルに行った」とのこと。その積極性で取った2点を最後まで守り切っての優勝に、「よかったです」とにっこり笑顔。
ただ、終了間際の目黒の猛攻はすごく、「体力が限界でした」とのこと。そこを乗り越えられたのは、「(大学で)初めてとなるタイトルが本当にほしかった。絶対に優勝する、という気持ちを持ち続けられた」からだった。
埼玉・花咲徳栄高時代では2年生のときから団体戦のレギュラーを務め、2019年にインターハイ学校対抗戦で2位へ。同年のJOCジュニアオリンピックカップ・カデット92kg級では優勝もしているが、明大へ進んでからは学生3位が最高。初の優勝にホッとした表情だ。
エントリーの少なさは予想外だったが、目黒や西日本の強豪の名があって気の抜けない闘いとなることは覚悟していた。それでも、「チャンスだと思った。この大会に向けてしっかり練習してきた」と振り返る。
特に大きな要因だったのが、学生時代に97kg級で学生王者に輝いている二ノ宮寛斗コーチ(不二精機)の存在。昨年の全日本選手権と今年の全日本選抜選手権の125kg級でともに2位となり、来月のワールドカップ(米国)に日本代表で出場する全日本トップ選手。その選手と毎日練習していれば、実力がアップするのも当然だろう。森陽保監督からは精神的なアドバイスも役に立ったそうで、明大のコーチングスタッフをあげての優勝だった。
明大選手の優勝が31年ぶりということは、まったく知らなかったそうだ。「運もあったと思いますけど…」と謙遜するものの、どんな形であっても「優勝」は選手の自信になる。「来年はリーグ戦でもチームの順位を上げ、個人戦でも優勝を目指して頑張りたい」という気持ちが湧いてきた。
その前に、来月の全日本選手権もある。練習相手の二ノ宮コーチがワールドカップ出場で大会直前の約1週間、不在になるのは痛いが、「自分で負荷をかけて厳しくやりたい。出げいこも考えています」と話し、この優勝をステップに自身の飛躍と古豪復活を目指す!