※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2022年栃木国体の男子グレコローマン67kg級は、2年連続学生王者の曽我部京太郎(愛媛・日体大)が3人の社会人選手相手を含む4試合を勝ち抜き、少年時代から通算で4大会連続優勝。フリースタイルの世界王者・成國大志(MTX GOLDKIDS)の参戦表明で、さらに熱くなりそうな激戦階級で実力をアピールした。
準決勝(清水賢亮=2021年世界選手権63kg級3位)、決勝(北條良真=2019年全日本学生選手権72kg級優勝)と自衛隊の強豪選手が続いた。「いいところを全部出し切れなかったのですが、しっかり勝ち切れたのはよかったと思います」と、100パーセント満足の内容ではなかったが、及第点はいったと感じた様子。
国体のあとは、すぐにU23世界選手権を控えており(スペイン=同級は10月18日)、「そこで勝つには、まだ足らないところがあります。時間は短いですが、修正したい」と、すぐに課題克服に取り組むことを口にした。
清水との試合は、第1ピリオドを3-0とリード。第2ピリオド、低い体勢の俵返し(2失点)を決められるなどして3-4と逆転されたが、ラスト48秒にグラウンドの攻撃権を得たあと、ローリングでも俵返しでもなく、相手の上半身をなかば強引に後方へ返して2点を獲得。5-4として終了のホイッスルを聞いた。
「清水選手は(自分への)対策をしっかりしてきましたね。前にプレッシャーをかけにくい体勢をされてしまった」と振り返る。それでも押し負けることなく闘うことができ、貴重なパッシブを取れたことが、一度はリードされながら逆転につながったようだ。
決勝の北條戦は、開始早々にバックを取られそうになり、その流れで場外へ出てしまった。さらにパッシブを取られて、0-2とされて第1ピリオドを終わる劣勢のスタート。「場外の1点は要らない失点ですね。駄目なところでした」と反省する一方、その後のパッシブによるパーテール・ポジションの防御を守り切ったことには一定の評価。北條はリフト技を使う選手だが、「集中してしっかり守れたのは、よかったです」と言う。
0-2になっても焦りはなかった。「ローリングの体勢になれば、絶対に返せる」との自信があったからだ。その思い通り、第2ピリオド30秒にパッシブを奪ってグラウンドの攻撃権を得ると、ローリングを5回転連続で決めて11-2へ。ワンチャンスをものにして優勝を引き寄せた。
終わってみれば実力差を見せての優勝だが、「第1ピリオドにグラウンド(の攻撃権)を取る、が課題だった。(決勝では)それがクリアできなかったのは、悔しいです」との反省を忘れなかった。
学生王者、国体王者と続けば、当然、次の国内での目標は全日本王者になるだろう。昨年の全日本選抜選手権では、今年の世界選手権代表となった遠藤功章(東和エンジニアリング)に勝っているし、7月の「ピトラシンスキ国際大会」(ポーランド)では2位に躍進し、遠藤の5位を上回る成績を残している。
ただ、全日本選抜選手権では遠藤が負傷していたもよう。ポーランドの大会では直接対戦があったわけではない。今年の6月の明治杯全日本選抜選手権決勝では1-6で敗れており、毎日の練習でも大きな壁と感じている。
「遠藤先輩に勝てれば、パリ・オリンピックにつなげられると思います」。逆に言えば、その壁を越えない限り、パリは見えてこない。
全日本社会人選手権のグレコローマンで優勝している成國のスタイル変更について話が及ぶと、「だれにも負けるつもりはありません」と話し、自分こそが遠藤への“第一挑戦者”という気持ちを表した。
U23世界選手権を経て、全日本選手権ではどんな強さを見せてくれるか。