※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2022年栃木国体の成年男子グレコローマン72kg級で、全日本学生選手権優勝の春日井湧雅(岐阜・日体大)が、初戦の2回戦で “世界王者”成國大志(三重・MTX GOLDKIDS)を2-1で撃破。勢いに乗って優勝を目指したが、続く準決勝で35歳のベテラン、井上智裕(神奈川・FUJIOH)に1-7で屈し、栄冠獲得はならなかった。
岐阜・中津商時代には特別な実績はなく、日体大に進学してから、新人戦3位などの成績を残しながら実力をつけた選手。今夏の全日本学生選手権で初めて決勝進出を果たし、学生王者に昇り詰めた。昇り調子の選手だけに、前回まで4大会連続優勝中の全日本&全日本選抜王者・井上に敗れても、経験と考えれば“貴重な黒星”とも思えるが、学生王者のプライドは、そんなものではなかった。
「優勝を目指していた…。悔しい…!」。インタビュー途中でこらえ切れなくなり、嗚咽で言葉が途切れた。「まだまだ実力が伴っていない。もっと確実に取り切る力をつけたい」と絞り出すように話し、さらなる飛躍を口にした。
スタンドでは互角近くにでき、「前に出るレスリングはできたと思う」と振り返る。ただ、ポイントが取れたわけではなく、課題としてやってきたことは出せなかったと言う。「圧倒的な力をつけないと、他の選手にも勝つことはできないと思います」と、“互角にできた”では満足できない。
敗因は井上のローリングを防ぐことができず、3回転してしまって6点を取られたこと。学生選手とは違う全日本トップ選手のローリングの強さを経験し、「体をずらすことができなかった。ずらして防ぐ、ということを、もっと突き詰めていきたい」と言う。
初戦の成國戦に話が及ぶと、「自分は日体大で4年間、グレコローマンをやってきた。負けられない、という意地がありました」ときっぱり。
成國はフリースタイルで世界一に輝いた選手だが、グレコローマンでもJOCジュニアオリンピックカップや全日本学生選手権を制したことがあり、早くから同スタイルでも実績を残していた選手。今年も、7月の全日本社会人選手権で自衛隊のグレコローマン専門選手を破るなどして優勝。今後はグレコローマンでの世界選手権出場を目指す選手だ。
それであっても、“専門家”の技量が上回った。「内容はよくなかったのですが…」と言いながらも、勝ったことには一定の評価。
「意地?」との確認の問いに、「意地はすべての試合で持っています」との返答。「スタイルは違うが世界王者に勝ったことは自信になるのでは?」との問いには、「優勝が目標だったので…」と再び言葉が詰まり、「それができなかったので、悔しさしか残っていないです」と涙声で続けた。
「技術的に足りないところが多い。それを克服していかないとならない。これから出る大会、すべて優勝を目標に頑張りたい」と巻き返しを誓った春日井。成國はツイッターで「シンプルに相手の子強すぎた」とつぶやき、その強さを認めていた。