※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
9月10日開幕の世界選手権(セルビア)へ、熱い思いで向かうのが、男子グレコローマン67kg級、25歳の遠藤功章(東和エンジニアリング)。2018年以来、4年ぶりに臨む舞台は、「簡単に勝てる試合はないと分かっているが、メダルを取るつもりでいく」と意気込む。飛躍を果たせるかに注目だ。
2018年には63kg級でU23世界選手権を制した男も、昨年の東京オリンピックには予選にも出場できなかった。この階級は、日本勢はオリンピックの出場権を取ることができず、じくじたる思い(恥じる気持ち)で昨夏の闘いを見守った。
だが、オリンピック予選では77kg級の屋比久翔平(ALSOK)の練習パートナーを務め、その屋比久が激闘の末に銅メダルを獲得。階級が下の文田健一郎(ミキハウス)は60kg級で銀メダルを取り、日体大の先輩の活躍に刺激されたことは言うまでもない。
2人の徹底して相手を研究する姿も参考になった。「試合に向けた準備、コンディションの作り方もすごく勉強になった」と話す。屋比久の銅メダルには、わずかに触らせてもらうにとどめた。「次に自分が取ると思っているので。自分も表彰台に行きたいし、行けると思っている」と話すとき、口調は自然と力強さが増していた。
大きな目標へと歩む道のりは充実している。6月の全日本選抜選手権決勝では大学の後輩となる成長株、曽我部京太郎(2021年学生王者)に対し、右差しからプレッシャーを与え、寝技に転じる連続攻撃で6点を重ね、勝ち切った。7月下旬のポーランド遠征では、東京オリンピック銅メダルのモハメド・イブラヒム・エルサイェド(エジプト)とも練習し、寝技の攻防での手応えを得た。
「グラウンドは通用するな、と感じた。相手は場外際がうまくて、そういったところを経験できたのも大きい」と笑みを浮かべる。ヨーロッパの選手にも力負けした感覚はなかった。新型コロナウイルス禍以降で初めての長期海外合宿は、秋の大勝負に向けて実りあるものになったようだ。
対戦を熱望するのは、やはり東京オリンピック王者で、世界選手権2連覇を狙うモハマド・レザ・アブドルハム・ゲラエイ(イラン)になる。2024年パリ・オリンピックまで、間違いなく67kg級の中心を担っていくであろう猛者に挑戦できれば、遠藤にとっても大きな意味を持つ。どんどん前に出て、寝技でポイントを着実に取っていくスタイルは確立され、迷いはない。
「4年前より経験を積んでいるし、もう経験を積むような時期でもない。自分はきれいなレスリングではない。泥くさく勝つ」とすっきりした表情。
日本が東京オリンピックに出場できなかった階級で遠藤が活躍すれば、日本グレコローマンがさらに活性化する。大暴れをして、遠く日本から応援する人々に生き生きとした笑顔を見せてほしい。