※本記事は日本レスリング協会公式サイトに掲載されていたものです。

初戦のスウェーデン戦で戦う斎川(青)
【ロンドン(英国)、文=増渕由気子、撮影=保高幸子】“日本重量級の救世主”斎川の上位進出ならず-。男子グレコローマン96kg級の斎川哲克(両毛ヤクルト販売)は、初戦で昨年世界2位のジミー・リドバーグ(スウェーデン)にストレートで敗れて初戦敗退に終わった。
斎川は「相手が強かった。負けた自分が弱かった。スウェーデンが勝つ(決勝まで行く)と思った」と強豪ひしめくブロックのため、敗者復活もなく終わったことを残念そうに話した。初戦の相手は世界2位。勝ち進むと世界3位のルスタム・トトロフ(ロシア)と五輪3次予選優勝のシャルバ・ガダバーゼ(アゼルバイジャン)。準決勝で対戦するプールには、昨年の世界王者、ブルガリアのエリス・グリ(ブルガリア)がいる。伝統あるピトラシンスキ国際大会優勝の肩書がかすむほどの激戦区を勝ち抜くことはできなかった。
■84kg級からの階級アップで急成長
84kg級で全日本王者から陥落し、階級アップを図ってから1年。グレコローマンチームの中で一番、急成長を遂げたのは斎川だった。2011年の世界選手権に出場していないのにも関わらず、今年3月の五輪アジア予選でいきなり2位となり出場権を獲得。さらに6月には海外で武者修行を敢行し、その総仕上げで出場した“五輪前哨戦”と位置付けられていたピトラシンスキ国際大会で優勝。くしくも栃木県立足利工高時代の恩師、長嶋偉之氏はロサンゼルス五輪82kg級銀メダルと貴重な重量級メダリスト。この巡りあわせも手伝って、軽量級同様に一気にメダル候補となった。
84kg級時代、海外遠征では思うような成績を出せないことが多かったため、いきなりの躍進理由を何度も多くの記者に質問されても、「慣れたことが一番」と経験を積み重ねたことが最大の理由に挙げた。五輪に向けての目標は「まずは初戦を勝つこと。ここを勝たないとメダルもないので」と初戦に照準を合わせていたのだが…。
■完敗を認めたが「もう一度闘いたい」
勝負の分かれ目はスタンドだった。6月の武者修行で得た勝利の方程式は、スタンドで相手をバテさせることだった。だが、第1ピリオドのディフェンスグラウンドでは、俵返しを受けてしまい、第2ピリオドのオフェンスグラウンドでは、クラッチを組むもののローリングを仕掛けても、相手の体はびくとも動かなかった。作戦がうまくいかず斎川は「しょうがない」と振り返った。「相手はベテランの選手で何回も世界の表彰台に立っている。相手は自分に対しての対策を持っていた」と完敗を認めた。
だが夢にまで見た五輪の舞台に立って経験できたこともあった。「周りのサポートがありがたかった。これだからみんな五輪に出たいんだろうな」。気の早い4年後という質問には「どうですかね? 今は何も考えられない」としたが、「96kg級に階級をアップしてまだ時間が経っていない。(五輪ではなくても)違う試合でもう1回試合してみたい」と現役を続けるそぶりも見せた。「(負けてしまった五輪だから)楽しくないけど、ありがたかったです」と総括した斎川のロンドン五輪は幕を下ろした。