※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=保高幸子)
女子68kg級代表として世界選手権(10月2~10日、ノルウェー・オスロ)に出場する宮道りん(日体大)。2019年の全日本学生選手権の優勝などを経て、今年5月の全日本選抜選手権で初優勝。同日行われたプレーオフも制して、初の世界選手権代表の座を勝ち取った。
宮道は「だれよりも練習したという自信を持って明治杯(全日本選抜選手権)に臨んだ」と言う。カデットやジュニア時代には各世代のアジア選手権でメダルを獲得しており、昨年はロシア最高レベルの国際大会と言われる「ヤリギン国際大会」で準優勝。少しずつ実績をあげている。
「パリ・オリンピックに出たい。そのためには、全日本で優勝することが、パリまでの中間目標のひとつ」との気持ちのもと、全日本選抜選手権の前はオフ返上で練習を積み重ねた。
器用な選手ではない。「みんなが10回で覚えられることを、20回やっても覚えられない」と自己分析する。だからこそ、他の人がやっていないときも練習しないと勝てない、という思いだった。
オフの日は言うに及ばず、大学が長期の休みのときも帰省せず練習をしてきた。女子選手が誰もいないときは、男子の練習にも混じった。「日体大の男子はレベルが高いし、練習の雰囲気も取り組む姿勢も見習うところがたくさんある」と、多くを吸収した。
オフの日の練習は、伊調馨・外部コーチが常に見てくれたことも心強かった。「しんどいと思うときもあった」が、勝つために自分がやるべきことを見つめ、やり遂げたという自負がある。優勝で、恩返しができた。
相手選手を研究するよりも、自分のレスリングをすることに重きを置いていると言う。得点能力はある。だが失点も多いことが、これまでの敗戦での大きな原因。この面の克服が強化目標。全日本選抜選手権まではディフェンスに重きを置いて、「相手に点を与えない練習をしてきた。正面を向く、足の向き、圧のかけ方などの基本を練習しました」
自信を持って試合に出られたことと、リードしていても取りに行くレスリングができたことが、勝ち抜けた要因だろう。「同じように闘えば、世界でも力を発揮できる」と考えている。「外国の選手は力が強い。しっかりと構え、自分の距離を徹底的に保つことが重要になる」と、今も基本を意識して練習している。
初出場の世界選手権は、「もちろん優勝したい」と宮道。オリンピックに出ていた選手がたくさん出場してくることも楽しみだと言う。「自分の技がどこまで通用するのか、いろいろ出してみたい」と、惜しげなく自分のレスリングをするつもりだ。
地味な練習をこつこつやり続けることで昇り詰めた日本の頂点。同じように、世界の頂点を目指す。