※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)
「優勝以外は狙っていなかった。全員で勝ち取ろうという思いで大会に臨んでいました」
鳥栖工の小柴健二監督は、満足そうに大会を総括した。2年ぶりに開催されたインターハイ学校対抗戦で、3月の全国高校選抜大会に続いて初優勝を果たした。決勝は一昨年まで4年連続で優勝している日本体育大柏(千葉)だった。鳥栖工は5-2というスコアで勝負をつけた。
初戦から決勝まで5戦全勝という圧倒的な強さで団体優勝に貢献した55㎏級の尾西大河は「どこの学校が相手でも負ける気はしなかった」と振り返る。「春の選抜で団体優勝したとき、4-3というチームスコアがなかった。そのときから十分いけると思っていました」
尾西とともにポイントゲッターを務め、全試合テクニカルフォールという記録を残した60㎏級でキャプテンの小野正之助は、2年前のインターハイ準決勝で日体大柏に敗れ、3位に終わったときのことをよく覚えている。
「今回は取れるところで取り、取られてしまっても、みんなでカバーし合いながら勝ち上がることができてよかった」
小柴監督にとっては2年ごしのリベンジだった。「今まで柏さんにはずっと負けていますからね。去年は勝つつもりでいたけど、大会が中止になってしまった。今年初めて決勝に進出して、おまけに柏にも勝つことができたのでうれしく思います」
今年のチームは個性豊か。小柴監督は「全員頑張ってくれた」と前置きしつつ、「尾西と小野は確実に白星を挙げてくれた。今回は51㎏級の白川剣斗も、決勝は熱中症で途中棄権という形になってしまったけど、それまでは全部勝ってくれた。1年で125㎏級の甫木元起も全勝だった。このあたりが優勝できた要因だと思います」
コロナ禍で満足な練習ができなかったり、遠征に行けなかったりの時期もあったが、小柴監督は工夫で乗り切ったという。「個々のレベルが高いので、そういうときも(内々の)練習試合を増やして、試合勘を損なわないようにしました」
佐賀県に来て21年目。鳥栖工に赴任して11年目。群馬県出身の小柴監督は春の選抜とともにインターハイを制し二冠を達成した。
「今回、(監督として)通算20回目のインターハイ出場です。ようやく、いい結果を残すことができました」
学校対抗戦に鳥栖工あり。これから王国を築き上げることができるか。